2022 Fiscal Year Research-status Report
Exploration of the theory and practice for life security and community formation for the young poor in depopulated areas
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20K02194
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Research Institution | Meiji Gakuin University |
Principal Investigator |
金子 充 明治学院大学, 社会学部, 教授 (30366950)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
川本 健太郎 神戸学院大学, 総合リハビリテーション学部, 准教授 (80580662)
関水 徹平 明治学院大学, 社会学部, 准教授 (40547634)
柴田 学 関西学院大学, 人間福祉学部, 講師 (20580666)
直島 克樹 川崎医療福祉大学, 医療福祉学部, 講師 (70515832)
橋川 健祐 金城学院大学, 人間科学部, 准教授 (40632691)
竹内 友章 東海大学, 健康学部, 特任助教 (60755825)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 貧困 / 生活保障 / 社会的投資 / 資産ベース福祉 |
Outline of Annual Research Achievements |
当初予定していた離島過疎地域における参加型アクションリサーチを断念し、支援者のヒアリング調査および理論的な考察を中心とした共同研究を進めた。具体的には支援者に対するヒアリング調査を基礎として、生活困窮と就労・社会参加の課題を抱える当事者の状況を把握し、その上で社会的投資論と所得保障プログラムの検討をおこなった。研究成果として、それぞれの到達点と限界について考察した複数の論文・著書を執筆した。 本研究が研究対象とする離島過疎地域ではグローバルな市場社会化の進行の中で人間らしい労働と生活の権利が失われ、地域社会の持続可能性が損なわれている。そこで、福祉国家、企業、地域コミュニティ、家族といったアクターがそれぞれ協働して生活と労働を立て直す取り組みを進める必要がある。その取り組みの可能性の一つとして、行政の公共調達のしくみとそれを活用した社会的企業の実践がある。本研究の一環としてその意義の一端を提示した。公共調達は、社会的投資論が主張する人的資本活用と権利保障の相補性というフレームワークのもとで生活と社会参加を保障していく取り組みの一つだとされる。本研究では、それが福祉国家が地域社会を支えるという理念を掲げながら結果的に再分配機能を縮小させていく行政主導の「インフォーマルファースト」となっている部分があることを確認した。 本研究ではさらに、生活保障の中心となる所得保障プログラムの一例としてベーシックインカムや保証所得(Guaranteed Income)の実験的導入、そして資産ベース福祉論を考察した。アメリカで展開されている保証所得プログラムの政策動向と制度設計を例に、資産ベース福祉を取り込みながら社会的投資が機能している社会政策の現状、およびそれらが「非生産的な人々」を排除する傾向をもつという限界があることを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
コロナ禍を背景に当初予定していた研究方法を変更し、離島過疎地域における参加型アクションリサーチを断念する代わりに、支援者のヒアリング調査および理論的な考察を中心とした共同研究を進めることとした。 2022年7月27日に、子ども・若者の生活保障と社会参加の取り組みを実践している支援団体であるインターナショナル・フォスターケア・アライアンス(IFCA:International Foster Care Alliance)のソーシャルワーカーを招き、アドボケイト、権利保障、社会的養護における当事者参画の意義についてヒアリング調査をおこなった。 また2023年2月27日に沖縄県那覇市で障害者就労移行支援・生活訓練等を実践している合同会社キングコング、および沖縄県宜野湾市の地域活動支援センターはぴわんを訪問し、ソーシャルワーカーと利用者に対するヒアリング調査をおこなった。 これらをふまえて共同研究を進め、社会的投資論、公共調達論、ベーシックインカム論、資産ベース福祉論について理論的な検討をおこない、研究代表者は関連する2本の論文と、研究分担者はそれぞれ著書・論文等を執筆した。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度として引き続き支援者に対するヒアリング調査、研究会におけるディスカッションと理論研究等を並行して実施する。本研究の基盤となる現地調査研究をおこなう予定であった沖縄県宮古島市内において、2019年度まで、NPO法人・支援者・地域住民らとの関係を構築してきたが、3年に渡るコロナ禍により関係が希薄となってしまった。そのため訪問調査を断念してきたが、最終年度として訪問を実現させ、コロナ禍を受けた生活困窮や社会的孤立の状況についてヒアリング調査したいと考えている。 また理論研究では、これまで若年層の生活困窮と社会的孤立を中心に課題をとらえてきたが、ひきこもり、セクシュアリティ、精神障害、エスニシティ等に関わる複合的な生きづらさを抱える当事者の視点を取り入れ、過疎地域で暮らすそれらの若者の生活保障と社会参加の支援のあり方を検討し、支援の実践モデル構築につなげていく予定である。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス対応により、当初予定していた過疎地域における参加型アクションリサーチによる調査研究を3年間連続して先延ばしにしてきた。今後の研究の推進方策に記載したとおり、参加型アクションリサーチを取りやめて支援者に対するヒラリング調査に切り替えて今年度訪問調査を実施する予定である。また、この3年間ほぼ研究メンバーを対面による研究会を実施できていなかったため、全国各地にいる研究メンバーと関東もしくは関西での対面による研究会をおこなうため旅費を取り置いている。
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Research Products
(7 results)