2020 Fiscal Year Research-status Report
家族場面における認知症者との接し方を学ぶための工学支援技術
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20K02195
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Research Institution | Shonan Institute of Technology |
Principal Investigator |
湯浅 将英 湘南工科大学, 工学部, 准教授 (80385492)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
本多 博彦 湘南工科大学, 工学部, 教授 (90339797)
片上 大輔 東京工芸大学, 工学部, 教授 (90345372)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 擬人化キャラクタ / コミュニケーション / ヒューマンエージェントインタラクション / 認知症 / ソーシャルスキル |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,認知症者の姿をしたキャラクタを用いて仮想的に認知症者とのコミュニケーションのトラブル状況を作りだし,そのキャラクタとの対話を通して解決方法を練習するシステムを構築予定である.2020年は認知症者の典型的な症状を調査し,それに基づきトラブル場面のシナリオを複数作成した.各シナリオにおける認知症者が話すセリフとこちらからの接し方(正しい言動)も検討した.利用者が認知症者との接し方を学べるように選択肢を用意し,それを選ぶ形式としている.もし適切でない言動をした場合には再度シナリオが繰り返される.シナリオの提示,ユーザ側の言動の選択,フィードバックの一連の動作をするシステムを試作した.同時に認知症者を演じるキャラクタを新たに作成した.最新のCGキャラクタ作成ツールを導入することで,本研究の用途に相応しいキャラクタを作成できた.試作システムの不具合の修正や調整などを行ったあと,WEB上で実験を実施した.学習の形式が異なるシステムを用意し,利用者にとって使いやすい学習形式を調査することとした.2021年1月に実施を開始し,クラウドソーシングのシステムを利用し500人分のデータを取得した.現在分析を進めている.学習形式の比較検証を進めるため,別種の実験システムによる実験を計画している.まだ分析中であるが,研究の狙いとするシステムの特徴やシステムの利点に関する知見が得られたと考える.詳細な実験結果の分析を進めた後,対外発表をする予定である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2020年では認知症者の特徴的な症状や言動の調査の基づき,シナリオ場面を検討し,システムで用いるべき家族場面とシナリオを整理した.既存の文献から認知症者の症状は(1)記憶障害,(2)見当識障害,(3)理解力/判断力の低下,に大きく分類されると考えた.これに基づき,場面ごとの学習シナリオを検討し,試作するに至った.さらに認知症者を演じるキャラクタを新たに作成した.最新のCGキャラクタ作成のツールを用いることで,本研究の目的に即したキャラクタの作成が可能となった.従来のフリーソフト形式で提供されるCGキャラクタの多くは用途が限定されており,高齢者を描いたキャラクタは存在していない.認知症者を演じる高齢者役のキャラクタを作成できたことは一定の成果と考えられる.今後,認知症者と一緒に暮らす家族を演じるキャラクタを作成する予定である.さらに,作成した学習シナリオ,考案した学習形式,擬人化キャラクタに基づいてWEB上で実験するに至った.実験結果は分析中であるが,繰り返し学習することで(2回~3回程度),認知症者との接し方を学べている可能性が見えてきている.また,学習の形式はいくつか候補が考えられたため,利用者にとって学習しやすい形式や症状ごとの学習のしやすさの実験および検証を重ねていく. 以上,調査に基づいた学習形式の作成,擬人化キャラクタの作成と実験に至っていることより,研究はおおむね順調に進行していると考える.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,現在進めている実験の継続とその分析を進め,システムの有効性および学習効果の検証を重ねていく.シナリオをどのくらい体験すると学べるのか,また,認知症者の特徴的な症状や言動ごとの学習率の違いも検証する予定である. さらに,複数の家族が登場する家族場面の作成に着手する.家庭の介護場面における対応方法についても,これまでに適切な方法は考えられていないため,家庭の介護場面でどのようなトラブルがあるかを調べ,適切な対応手順を調査する.それに伴い,家族を演じるキャラクタの作成が必須となる.これまでに得たキャラクタ作成のノウハウに基づき,様々なキャラクタを作成できると考えている.シナリオや家族場面ごとに応じたキャラクタ作成を進める. さらに,適切なフィードバック部分(接し方が適切であったかどうかの返答や解説)の作成と学習効果の詳細な測定実験を行う.認知症者の持つ各症状(見当識障害,記憶障害,理解・判断力の低下)に対して,家族側の相応しい接し方(発言内容やしぐさ,タイミング)を確認する.実験利用者の対象を増やしたり,対象者の種類(年齢層など)を変えたりすることにより効果の違いなどの検証を進めていく.十分な学習効果が得られない場合は開発にフィードバックしていくことを繰り返し,より役立つシステム構築を目指していく.開発システムの有効な公開方法および共有方法も本研究では重要と考え,それも踏まえて研究活動を進めていく.
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Causes of Carryover |
社会情勢の変化に伴い,特に旅費および人件費の使用分について次の年度で使用することとなった.社会情勢にも依るが旅費を使わないこととなる場合,システム開発と実験に力を入れ,開発するシステムを洗練させること,より詳細な効果検証を進めていく.今後の計画では,家族場面シナリオの作成とキャラクタ開発の追加が必要である.家族場面シナリオ作成ではその準備のための費用(資料購入や関連研究者,協力者との打ち合わせ),キャラクタ作成では最新技術(CGソフトやモーションキャプチャ)の導入のための費用としての使用を検討している.
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Research Products
(2 results)