2021 Fiscal Year Research-status Report
「雇用なき成長」下における若者の自立支援のあり方の国際比較研究
Project/Area Number |
20K02206
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
佐々木 宏 広島大学, 人間社会科学研究科(総), 准教授 (50322780)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
村澤 和多里 札幌学院大学, 心理学部, 教授 (80383090)
村澤 真保呂 龍谷大学, 社会学部, 教授 (80351336)
山尾 貴則 東北文化学園大学, 現代社会学部, 教授 (80343028)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 若者の自立 |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度は、昨年度に引き続きコロナ禍により海外現地調査の実施ができないという条件のもと、二回の研究会を開き、インド、フランス、日本、韓国、4か国の若者の自立困難の現状と背景、その困難が若者のメンタル面やアイデンティティ等に与えている影響について検討した。
第1回目の研究会は2021年7月にオンライン形式で実施した。この場では、インド、フランス、日本、韓国、それぞれの若者の自殺の現状について、各国研究班から報告をし、それらを比較検討をした。明らかになったことは、まずは「雇用なき成長」(十分な量の「まともな雇用/Decent Work」を提供できない経済成長のあり方)という共通の条件のもとでも、若者の自殺という社会現象のあらわれ方には大きな差異がみられることである。たとえば、フランス研究班からは、社会保障制度が比較的充実しているフランスでは失業による経済的困窮が自殺の直接的な原因になってはいないことが指摘された。また、日本研究班からは日本の場合、経済的困窮それ自体ではなく、うつを典型とする精神的な病が自殺の第一の原因とされていることが指摘された。
第2回目の研究会は2022年2月に東北文化学園大学(宮城県仙台市)において対面形式で実施した。この場では研究代表者から本研究計画の課題をあらためて説明し、研究チームでそれを共有した。その上で、研究代表者(インド研究班担当者)から、近年のインドの雇用と高等教育にかんする政府統計を用いた「雇用なき成長」の今後の見通しについての報告をした。最新の雇用や教育統計から判断する限り、インドにおける「雇用なき成長」は当面続くと見込まれるというのが本報告の結論である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究の課題遂行のためには、インド、フランス、日本、韓国での現地調査の実施が不可欠である。2021年度は日本国内での調査は部分的に可能となったが、海外調査の実施は不可能であった。このため、計画は遅れている。ただし、海外調査の実施が困難であろうことは、今年度はじめに想定しており、各国の政府統計や関連する調査研究の結果を参照した研究推進を2021年度の研究計画に盛り込んでいた。その結果、2020年度と比較すると一定の前進があったこともたしかで「やや遅れている」と評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も海外現地調査の実施制限は続くと思われるので、2021年度に引き続き、日本国内からアクセス可能な各国の統計資料、先行研究、公文書等の分析をすすめる。むろん、現地調査が可能になった場合は、それを速やかにかつ積極的にすすめていく。
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Causes of Carryover |
コロナ禍により海外現地調査が不可能であっため、本研究の支出計画の多くを占めている海外旅費の執行ができなかったことが、次年度使用額が生じた理由である。繰り越した予算は、2022年度以降、コロナ禍の情勢を見定めつつ、現地調査や研究会の実施に必要となる旅費や物品費等に充てていく予定である。
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Research Products
(13 results)