2021 Fiscal Year Research-status Report
日米における生活困窮者支援策に係る実証的研究 ストリート組織の視点から
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20K02221
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Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
木下 武徳 立教大学, コミュニティ福祉学部, 教授 (20382468)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | アメリカ / ウィスコンシン / 公的扶助 / ストリート組織 |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度も引き続きコロナ禍のために現地調査を主体とした研究活動に成約があり、研究はスムーズにはいかなかった。しかし、2021年度は、日本でもケースワーク業務の民意館委託の議論が大きな問題となった。2022年1月には日弁連でもシンポジウムが開催され、2019年12月にケースワーク業務の外部委託で閣議決定がなされていること、その後、厚労省の通知でケースワーク業務の負担軽減策として検討されていることが明らかにされ、東京都中野区ですでに実施されている内容や問題点について報告があった。一方、日本社会福祉士会等の専門職団体はこの動きに対して反対声明をだしており、現下公的扶助政策上、調査研究が求められる課題の一つとなっている。この研究では、立命館大学の桜井准教授の報告や論文が先駆けであり、これを踏まえた上で、日本の生活保護と生活困窮者自立支援制度の実施形態について検討を行った。特に、2020年に行った生活困窮者自立支援制度のアンケート調査結果について本科研費の研究に基づいた分析をしているところである。 また、福祉事務所の民間委託をしているウィスコンシン州のワークフェア型の公的扶助Wisconsin Worksで2年毎に行われている競争入札や委託契約の内容の分析やその規定内容の変化を時系列でまとめているところである。これをみるとことで、民間委託で生じる多くの問題に対応してきたことが見て取れる。例えば、その運営については、地域運営委員会を設置して公的扶助のマネジメントに地域の目を取り入れる取り組みなどが行われるようにして、単に委託先の企業やNPOの中だけで運営が行われないような仕掛けが設けられている。これは、日本でも社会福祉法人改革で行われている評議員会機能の強化等と同じ動きだと思われる。特に生活困窮者自立支援制度などでこうした取り組みを進めていくことが求められていると言えよう。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
昨年に引き続き、コロナ禍のため現地調査がなかなか進まない状況であった。そのなかで、アメリカについては、コロナの感染拡大等のために当初予定をしていた現地調査ができなかった。そのため、連邦政府の保健福祉省の報告書やデータ、政策変化について検討を行い、ウィスコンシン州の会計監査報告書を時系列で検討をしてきた。ウィスコンシン州の事例検討については、2022年度中に公表する予定である。また、所属している貧困研究会等でオンラインで行われたコロナ禍における生活困窮者支援の実態を研究会や講演会、文献等により特に生活困窮者自立支援制度と生活保護制度の情報収集をした。また、先に書いたように、生活困窮者自立支援制度の調査結果の検討を行った。この点については、2022年度中に研究成果を公表できるようにしたいと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度は研究の時間を得られることになり、また、コロナ禍の制約も緩和されてきているので、ロサンゼルスとニューヨーク、ウィスコンシン州でヒアリング調査を実施する予定である。また、アメリカやカナダで開催される学会(ISTRとARNOVA)にも参加し、NPO研究を中心に本研究に関わる最新の研究動向について情報を入手する予定である。日本でも、これまでアンケート調査や現地調査で関わってきた自治体を中心に北海道と大阪、関東を中心に再度、自治体および生活困窮者自立支援制度の自立相談支援事業の委託先を中心に訪問調査をすすめることにしている。2022年度は時間的な制約が緩和され、また、コロナの制限も緩和されてきており、現地調査を中心に研究を進めていきたいと考えている。
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Causes of Carryover |
コロナ禍のため、アメリカおよび国内での現地調査ができなかったことが大きな原因である。しかし、2022年度は、ワクチン接種等も進み、また、With コロナの考え方が浸透し、コロナ禍であっても、適切に感染予防をしながら社会活動が行われる状況になってきたため、2022年度はこれまでできなかったアメリカおよび日本国内の現地調査を中心に実施する予定である。進捗状況でも書いたが、2022年度は講義や会議負担が軽減されたので、調査に専念できる環境が整えられた。すでに現在、アメリカの福祉事務所の担当者等と現地調査の調整を進めているところである。
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