2020 Fiscal Year Research-status Report
里親における乳幼児養育の現状と養育支援プログラムの開発
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20K02222
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
上鹿渡 和宏 早稲田大学, 人間科学学術院, 教授 (10623689)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 里親養育 / 社会的養護 / 乳幼児里親 / Watch Me Play |
Outline of Annual Research Achievements |
定期的にThe Tavistock & PortmanのWatch Me Play(WMP)チームから、英国での実践状況、対象者、WMPの具体的な実施方法や教授方法についてアドバイスを受けた。WMPの適応範囲については、英国では、社会的養護のもとにいる乳幼児だけでなく、学校、また今回、新型コロナの広がりで家庭訪問が難しくなったことから、養育に困難を抱える親向けにも改訂されて使用されるようになった。当初想定されていた社会的養護の子どもたちだけでなく、適応範囲が広がっていることがわかった。 具体的な日本での実践に向けWMPを導入する際の文化的背景や、支援者のトレーニングの状況の違い、また対象者の違いなどについて調査を行ったところ、英国やその他のヨーロッパ圏ではWMPを始める実践者には、ソーシャルワーカーも含め乳幼児観察のトレーニングを終えているものが多いことが判明した。日本導入には事前に子どもの観察などの知識やトレーニングを実施することが有効であると考えられた。 またWatch Me Playプログラムで使用される2冊のマニュアルについて開発者のDr Jenifer Wakelynから許可を経て翻訳作業を開始した。7月にはマニュアル1(実施方法)とマニュアル2(理論)の日本語版翻訳を開始した。社会的養護の現場の保育士、ソーシャルワーカー、心理士にマニュアル1について検討してもらい、日本の文化にあわせた表現や内容を追加修正し最終的な日本語版マニュアル1とリーフレット版を完成させた。(マニュアル2は、英国での改定を待って、最終バージョンを来年度の上旬には完成させる予定である。)現在、日本語版マニュアル1、リーフレットは、The Tavistock & Portman NHS のページから無料でダウンロードが可能である。また来年度以降の実践にむけて、参加希望者のリクルートを開始している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新型コロナウィルスの影響で、研究代表者の渡英や、現地でプログラムの研修に参加が不可能になった。しかし、イギリス国内の感染の拡大に伴いThe Tavistock & Portmanチームもインターネット会議や、研修を充実させてくれたおかげで、当初の予定から大きく遅れることなくさまざまなミーティングの継続が可能になった。
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Strategy for Future Research Activity |
1)Watch Me Play(WMP)プログラムの参加協力者のリクルートを、今後も乳幼児の里親支援をしているフォスタリング機関や自治体などで声を掛ける。 2)日本語版のWatch Me Play理論篇のマニュアルの完成とホームページ上での公開。 3)乳幼児の里親養育状況の調査に加え、プログラム実施のための研修をThe Tavistock & Portmanチームの協力を経て、インターネットなどをつかった講義などで実施予定。 4)Watch Me Playプログラムに関して、里親支援員、里親、子どものそれぞれのプログラム導入前後、フォローアップに関しての調査では、自由記述を含む質問紙や半構造化面接、評価をおこなう。 5)Watch Me Playを提供する支援員にワークディスカッションという事例検討を定期的に行なう。並行してThe Tavistock & Portmanからの定期的なコンサルテーションを受ける。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルスの影響で初年度に計画していた、渡英や現地での研修参加の目処が立たなくなったため、旅費や滞在費を使用することができなかった。また、日本国内でも移動が制限され、リクルートのための説明会やミーティングなどについても具体的な研究計画を立てることができなかったために、こうした調査費用や内容を次年度に使用せざるをえなくなった。次年度は、渡英や開発者の日本招致などを計画しているが、新型コロナウィルスの状況に合わせた新しい形での研究調査体制を整備させる必要があると考えられる。そのためにインターネットを使用した形での研修や講義、コンサルテーションなどの活用やその技術面に、今年度の予算を使用することも考えている。
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Remarks |
日本の文化にあわせた表現や内容を追加修正し、最終的な日本語版マニュアル1とリーフレット版を完成。 Tavistock & Portman NHS のページから無料でダウンロード可能。
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