2020 Fiscal Year Research-status Report
The welfare state and redistribution on middle class: An empirical analysis using micro data
Project/Area Number |
20K02223
|
Research Institution | Kanto Gakuin University |
Principal Investigator |
田中 聡一郎 関東学院大学, 経済学部, 准教授 (40512570)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | 福祉国家 / 中間層 / 所得格差 / 再分配 / 社会意識 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、先進諸国では中間層の衰退が政策的関心をよんでいる。そこで本研究では、2010年代以降の国内外のミクロデータを用いながら、未開拓な研究領域であった中間層の衰退と福祉国家に関する実証分析を行う。 具体的には、基礎研究として「福祉国家の支持基盤としての中間層研究」、政策研究として「中間層の生活保障と政策対応」(中間層の世帯に対する社会政策のあり方の検討)に取り組む。以上の研究課題に取り組むことで、福祉国家への支持基盤の獲得や分厚い中間層の再形成のための政策立案に資するエビデンスを提供するような、政策的な問題意識をもった研究を実施する。また中間層の推移・変動要因・望ましい政策対応に関する分析は、福祉国家のアウトカム評価にもつながり、政策立案においても意義がある研究となるだろう。 2020年度の研究成果としては、現物給付の再分配効果の推計方法の検討と国際比較研究を行った。再分配効果の推計方法の検討においては、現物給付を個人や世帯に割り当てる方法について確認した。また国際比較からは、現物給付の再分配効果は、現金給付・世帯の税負担の再分配効果よりも小さいという結果であった。現金給付の主な目的が所得格差の縮小であるのに対し、現物給付の主な目的が公共サービス(医療、介護、教育、住宅等)の普遍的な提供と考えると、いわば当然の帰結ともいえる。しかし、現物給付の格差縮小効果も一定程度あることから、その再分配効果については無視すべきではないと議論した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2020年の前半はコロナ感染拡大によって、研究室での研究活動が制約された。そのため分析手法の検討や国際比較研究を中心に取り組んだ。その研究の一部は、論文「現物給付の再分配効果-その推計方法と国際比較」として公刊することができた。後半は政府統計の利用申請準備、住宅手当や医療・介護費の利用者負担軽減などの中間層を支える社会政策のプログラムの検討を行い、研究計画の遅れを取り戻すように対応した。
|
Strategy for Future Research Activity |
2021年度は、日本の中間層の変動について、人口構成や就業形態別に寄与度分解を行い、変化要因の検証を行う。加えて、住宅手当等の政策シミュレーションの分析結果もまとめたい。学術誌への投稿などを随時行い、昨年度より準備を進めてきた研究成果の公表に努める。
|
Causes of Carryover |
2020年4月の緊急事態宣言を受けて、自宅での研究・教育活動の要請、また図書館の閉館・制限利用などが行われため、研究に遅れが生じた。2021年度はコロナ禍における研究活動の継続についての経験も積んだので、研究に注力できる。使用計画としては、論文執筆にかかる書籍・論文購入および英文校正の費用に充てたい。
|