2021 Fiscal Year Research-status Report
The welfare state and redistribution on middle class: An empirical analysis using micro data
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20K02223
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Research Institution | Komazawa University |
Principal Investigator |
田中 聡一郎 駒澤大学, 経済学部, 准教授 (40512570)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 福祉国家 / 中間層 / 所得格差 / 再分配 / 社会意識 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、2010年代以降の国内外のミクロデータを用いながら、中間層と福祉国家に関する実証分析を行う。福祉国家への支持基盤の獲得や分厚い中間層の再形成のための政策立案に資するエビデンスを提供するような研究を実施することを研究目的としている。 2021年度の研究成果としては、中間層の長期推計とコロナ禍の下でのセーフティネットの検討を行った。中間層の長期推計では『国民生活基礎調査』(1985年~2015年)のミクロデータを用いて、中間層の所得域を各年で設定して推計した場合と1985年の所得域で固定して推計した場合に分けて、日本の中間層の規模(人口シェア)の検討を行った。その結果、日本では2000年代以降の所得分布全体が低下傾向にあり、そのことで中間層の規模も縮小していることを示した。その研究成果の一部は、中間層を支えるための政策提言としての住宅支援・教育支援の必要性とともに、日本経済新聞「経済教室」で公表した。 コロナ禍の下でのセーフティネットの検討では、2020年度の生活保護制度と第2のセーフティネットの動向を検討して、生活困窮者への対応は生活福祉資金貸付制度の特例貸付や住居確保給付金を主に活用して実施されていたことを確認した。その一方、コロナ感染症の悪影響の長期化のもとでは、不安定な就業形態が多い生活困窮者への支援としては、有期の現金給付や特例貸付では限界があることを指摘した。なお、その研究成果は論文公刊(共済新報)することで公表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2021年度は、中間層の分析としては、政府統計のミクロデータが利用できるようになったので推計作業を進めて、中間層の変動要因の検討や政策マイクロシミュレーション分析などを行った。その研究の一部については、日本経済新聞の記事「経済教室:中間層復活へ住宅・教育支援」として公表した。 またコロナ禍の下での福祉国家の課題を検討するために、日本のセーフティネットや所得格差への影響等を検討した。生活保護制度や第2のセーフティネットの現状分析を行い、論文「コロナ禍におけるセーフティネットの現状」として共済新報で公表した。また所得格差への影響については講演「コロナ感染症拡大と格差」として立教大学経済研究所の学術研究大会において発表した。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度は、中間層の研究については、人口高齢化の影響また税・社会保障の再分配効果など、その変動要因について、さらに新たな分析を進める。現時点でも執筆を終えた論文があるので、学術誌への投稿などを随時行い成果の公表に努める。本研究のもう一つのテーマである再分配政策に対する支持基盤の検討については、様々な仮説(支持政党、自己利益、階級・社会移動等)に基づく先行研究の整理を行い、またデータの申請準備等を実施する。 なお今年度実施したコロナ禍における所得格差の研究については、2022年度の前半には論文として公刊予定である。
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Causes of Carryover |
2021年度も緊急事態宣言の長期化などもあり、図書館の利用制限などにより研究活動が一部制約された。そのため予定していた分析作業も停滞したこともあり、残額が生じた。残額は新たな分析を行うための分析用PCの購入、また論文執筆にかかる書籍・論文購入および英文校正の費用に充てたい。
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