2021 Fiscal Year Research-status Report
女性支援政策の構築に向けた婦人保護事業の現代的再編に関する研究
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20K02249
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Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
湯澤 直美 立教大学, コミュニティ福祉学部, 教授 (00277659)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 女性支援 / 婦人保護事業 / 売春防止法 / 婦人相談員 / フェミニズム / セクシュアリティ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,売春防止法に規定される婦人保護事業がいかに女性支援政策として機能しているのかを,理論的・実証的に検証し,社会福祉事業としての今後の在り方を検討することにある。 そのために,まず,婦人保護事業の歴史資料を収集し,その展開過程を論証することが課題であるが,2021年度においては,これまでの厚生白書・厚生労働白書を中心に,社会福祉事業のなかでどのように位置づけられてきたのか(位置づけられてこなかったのか,という観点を含む)という点から検討を進めることができた。「その他の福祉」という位置づけが「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律」の施行によって変化するものの,婦人保護事業の独自性に関してはかえって位置づけが希薄化した現況が把握されている。 次に,婦人保護事業従事者調査については,おもに市区に配置されている婦人相談員に焦点をあて,労働条件および支援対象女性を把握するためのアンケート調査実施に向けたヒアリング調査を実施した。その結果として,1)都道府県によって配置数に大きな格差があることを踏まえた実態を把握する必要性,2)相談員が担っている実情をソーシャルワーク機能として可視化する必要性,3)2と関連して調整機能,ネットワーキング機能の実態を検証する必要性,などが浮き彫りになっている。 さらに,タイムスタディ調査実施に向けて会計年度職員制度について資料を収集して分析し,基礎的検討を進めることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究では,都道府県をはじめとする基礎自治体間での資源の配置状況の格差が,相談員や施設職員の仕事に与えている影響および利用者にもたらす制約に焦点を当てることが欠かせないが,新型コロナ感染症の感染拡大や持続の影響から,遠隔地へ出張することは控えざるを得ない状況である。一方,ヒアリング調査については,オンラインを活用して実施することが可能であったため,地方の実情なども把握することが可能であった。 また,相談員の業務実態は,コロナ渦ではなく平時の状況から検討を加えたかったことから,アンケート調査の実施は控えてきた。しかしながら,コロナ渦がいまだ収束しない現状を踏まえ,今年度においては,コロナ渦の影響も勘案した分析をする方向で調査の再設計をしたところである。 このような観点から,当初の計画よりやや遅滞しているものの,2022年6月に公刊予定の論文もまとめることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
・女性支援政策については,「困難な問題を抱える女性の支援に関する法律」案が国会で議論されている最中であることから,その動向を見定めて,必要な検討事項を更に深めていくことが必要である。2022年前半期において,法律の内容の精査と,女性支援政策を遂行する諸課題を整理していく。 ・2021年度には婦人相談員の配置状況の地域差を数値化し,論文にまとめた(2022年6月公表予定)。婦人保護事業の地域格差を論証していくことは重要であり,引続き,データ作成に取り組んでいく。 ・歴史資料の収集は一定程度前進しており,2022年度においても,引続き蓄積していく。 ・コロナ渦が長引いており,通常の状態での実態を把握する必要から,アンケート調査の実施を控えているが,2022年度は3年目に入ることもあり,アンケート調査の実施に取り組む。
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Causes of Carryover |
コロナ渦が長引いており,通常の状態での実態を把握する必要から,アンケート調査の実施を控えてきた。しかし,コロナ渦の収束が見込めないため,2022年度はコロナ渦の影響を勘案したアンケート調査を設計し,その実施に取り組む予定である。そのため,「アンケート実施」「タイムスタディ調査の実施」および集計・分析および報告書作成に充てる費用が必要であり,経費はそれらに充当する。 また,これまで入手できなかった古文書も発掘されていることから,歴史資料購入のための費用が引続き必要である。
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