2020 Fiscal Year Research-status Report
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20K02260
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Research Institution | Saiseikai Research Institute of Health Care and Welfare |
Principal Investigator |
原田 奈津子 社会福祉法人恩賜財団済生会(済生会保健・医療・福祉総合研究所研究部門), 済生会保健・医療・福祉総合研究所研究部門, 上席研究員 (20389513)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 災害福祉 / 災害時支援 / 専門職派遣活動 / ボランティア活動 / 連携 / 研修 / 災害救助法 / 費用負担 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度の研究では、テーマとして掲げている福祉施設における被災時の「受援」を考える上で、まずは災害時にどのような支援活動が展開されているのか、現状と課題を明らかにすることとした。 具体的には「専門職による派遣活動」や「ボランティアによる支援」について、支援活動の軸となりこれまで活動をしてきた方へのインタビュー調査を実施した。調査にあたっては、研究協力に関する同意書を得た上で、研究協力をお願いした。所属する研究所内での倫理委員会にて調査について承認を得て実施した。 調査の実施は、2020年11・12月であり、福祉専門職の職能団体から2名、ボランティアや市民の活動をサポートしている組織から1名、高齢者福祉施設の組織から1名の計4名を対象とした。インタビュー項目は、①災害時の支援活動・災害派遣福祉活動の活動状況、②派遣にあたっての困難事項:受け入れ先との調整、派遣者(派遣職員、スタッフ、ボランティア等)の調整、③派遣者(派遣職員、スタッフ、ボランティア等)へのサポート、④今後に向けて(今後の活動、課題など)である。 調査を通して、各自のフィールドにおいて、それぞれのやり方で災害支援活動を展開しており、次の段階として、連携をいかに推し進めていくのかが課題であるというのが明らかになった。他組織や団体と平時からの連携が課題であるとの認識が共通であった。この他、派遣者へのサポートとして、事前研修や連絡会を実施しているということがわかった。また、全体として、費用負担が自前での支援になりがちで、災害救助法における福祉に関する位置づけの強化を目指すことが重要であることがわかった。 今年度の研究により、災害時の支援活動における現状と課題を可視化できたことは非常に意義のあることだと考える。次年度以降、被災時、どのように支援を受け入れるのか、「受援」に焦点を当て、さらに検討していくこととする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
災害時の支援を検討する際、「受援」と「派遣」は表裏一体の活動であり、2020年度はまず「派遣」の側面に焦点を当て研究を行った。そのため、「研究チーム編成と災害派遣福祉活動の実践把握のための調査実施」を主眼とし、研究に取り組んだ。新型コロナウィルスの影響もあり、直に会うことでの打ち合わせや調査が難しい場合、メールによる意見交換やWEBによるインタビュー調査を取り入れるなど進め方についての工夫をその都度実施した。 「現場の職員の協力による研究チームの編成」・「以前行った済生会DCATの調査に関する意見交換の実施」については、所属する済生会を中心にこれまで災害時の支援活動を担ってきた方々に協力を依頼し、全員そろってのミーティングではなく、個々の意見をメール等にてうかがう形をとった。 「災害支援活動に関わっている団体や組織へのインタビュー調査」について、福祉専門職の職能団体、高齢者福祉施設の組織、ボランティアや市民の活動をサポートしている組織に協力いただき、災害時の支援活動に関連するインタビューを実施できた。専門職の災害派遣活動だけでなく、市民などによるボランティアによる支援活動についても調査できたことは意義深い。そのため、多角的に災害時の支援活動に関する現状と課題を明らかにできた。 先行研究からも、災害発生直後からDMATをはじめさまざまな組織による支援活動を開始する仕組みが整ってきているおり、医療だけでなく、日常生活に直結する福祉の支援活動も活発に行われるようになってきたことがみてとれた。 災害時の支援活動を「派遣」の側面から把握し、次の「受援」に関する現状と課題を明らかにすることで、災害時の支援について普遍化できる研究成果につなげたい。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度の調査を踏まえ、2021年度からは、被災した福祉施設がどのように支援を受け入れるのか、福祉施設の「受援」について着目して検討していく。 受援体制の構築にあたっては、児童、障害者、高齢者など対象者に広がりのある福祉施設の特性や、さらに地域性も考慮しなくてはならず、それぞれに応じた受援の仕組みの構築が求められている。これまでに被災し受援した経験のある福祉施設への聴き取りを行うなど、多角的に受援の現状と課題を明らかにし、福祉施設の普遍的な受援体制の構築に寄与したいと考える。 2021年度は、「被災時の受援に関する調査」をメインに行う。これまでに被災した経験を持つ福祉施設を対象として、当初は現地での視察なども考えていたが、コロナ禍などの社会情勢を考慮し、メールやWEBを活用し、聴き取りを行う。さらに、質問紙を用いた調査を実施する。それらをもとに、被災を想定した受援マニュアルの整備と職員教育、被災時の受援体制、回復期としての通常業務へのシフトなどを現場職員などと共に検討していくことを予定している。 災害時の福祉分野における支援活動について「可視化」し「普遍化」することが重要となる。これまでの課題を整理し、ノウハウとスキルを蓄積することで、共通要素を導き出すことが可能になる。現場での実践に寄与していくことを最終的な目的としている。
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Causes of Carryover |
コロナ禍により、インタビュー調査やミーティングなどにおける旅費がほぼかからなかったことにより、14万円と少し、次年度への使用となった。 2021年度においても当初、福祉施設の視察や学会発表などによる旅費を予定していたが、Webによるインタビュー調査や郵送による質問紙調査を大規模で行うことを予定している。特に質問紙調査については、全国規模での実施を予定していることから、その際の郵送費や資材に使用することとしたい。
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