2020 Fiscal Year Research-status Report
聴覚障害の親と健聴の子ども(CODA)における支援プログラムの開発
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20K02261
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
中津 真美 東京大学, バリアフリー支援室, 特任助教 (90759995)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | CODA / 聴覚障害者 / 親子関係 / ヤングケアラー / 役割逆転 / 家族支援 / 子ども支援 / 障害者家族 |
Outline of Annual Research Achievements |
聴覚障害のある親をもつ健聴の子ども(CODA;Children of Deaf Adults)は、幼少期から親の通訳を担う実態が知られ(Preston,1994)、家族ケアを行う子ども(Young carer)様の関係性が指摘される(中津・廣田,2012)。 本研究では、CODAと聴覚障害のある親に対応した支援プログラムの開発を試み、親子が有する課題とニーズに即応する支援指針を策定することを目的とする。 今年度は、予備研究として、CODAと聴覚障害のある親における課題および支援ニーズの構造を明らかにするための基礎的検討を実施した。具体的には、①主として、研究代表者らの先行研究(主に親子関係構造/親子関係の類型化)と「ヤングケアラーの実態に関する調査研究報告書」(2019)のテキストデータからキーワードを抽出し、コーダの各発達段階における固有の親子課題と支援ニーズを解析した。次いで、②本解析結果について、研究代表者と聴覚障害学およびヤングケアラー支援を専門領域に置く研究者計8名により、内容妥当性に関するメンバーチェッキングおよび質的検討を行った。 CODAと聴覚障害のある親における課題では、「親の課題解決の代理機能を伴う高度な役割」に伴う心理的課題と、「通訳の役割期待」に基づく回避または役割逆転の親子関係課題に大別された。支援ニーズの構造では、「Ⅰ.自分(CODA)」「Ⅱ.通訳を求める親」「Ⅲ.通訳に関わる周囲」の3領域の下位項目を認めた。「Ⅰ.自分(CODA)」では、自己確立に向けた相談等5項目、「Ⅱ.通訳を求める親」では、障害の受けとめに関する教育等4項目、「Ⅲ.通訳に関わる周囲」では、支援システムの構築等2項目を指摘できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究における「CODAと聴覚障害のある親に対応した支援プログラムの開発を試み、親子が有する課題とニーズに即応する支援指針を策定する」目的のうち、令和2年度は当初に計画した、CODAと聴覚障害のある親における課題および支援ニーズの構造を明らかにするための基礎的検討を行うことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
1)研究1-1:支援プログラム開発:今年度の予備研究結果を概念的枠組みとし、CODAの発達段階に応じた支援プログラムを独自開発する。 2)研究1-2:支援プログラム(ピア)講師研修の実践的研究:成人CODA当事者と、CODAの子育て経験をもつ聴覚障害のある親の各5名程度を対象に、支援プログラム(研究1-1)に対応するピア講師研修を実践する。 3)研究2:支援プログラムの効果測定: CODA30名と実親の親子ペア30組を対象に、研修を受けたピア講師(研究1-2)による支援プログラム(研究1-1)を実践する。実施期間は月に1度の頻度で6か月間とし、1セッション2時間とする。効果測定方法は、プログラム参加親子に対し、次の2種の方法を用いる。①質問紙調査:支援プログラムの初回開始前と最終回終了後に、親子関係評定尺度/5件法(科研費研究活動スタート支援2015-2016)の回答を求め、前後における下位尺度得点平均を統計的に比較検討する。②インタビュー調査:半構造化面接にて、対象例の心理的変容に関する叙述を収集し、質的に分析する。 以上により、支援プログラムの効果を明らかにし、CODAと聴覚障害のある親への支援指針を策定する。
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Causes of Carryover |
メンバーチェッキング等の研究者間の作業や、関連学会の開催など全てオンライン下で実施されたことから、旅費等の支出が抑えられた。
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