2020 Fiscal Year Research-status Report
身体拘束適正化に向けた行政指導・介護施設における取組の実効性に関する研究
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20K02290
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Research Institution | 社会福祉法人東北福祉会認知症介護研究・研修仙台センター(研究部、研修部) |
Principal Investigator |
吉川 悠貴 社会福祉法人東北福祉会認知症介護研究・研修仙台センター(研究部、研修部), 研究部, 研究部長 (90513630)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 身体拘束 / 高齢者虐待 / 行政指導 / 職場内研修 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、身体拘束適正化に向けた、①行政指導、および②介護施設等における体制・取り組みの実態とその実効性を明らかにし、それらの知見を総合的に分析することにより、③行政および介護施設等の双方において実効性を伴う取り組み内容を提示することを目的とする。具体的には、予備的な検討・調査を重ねた上で、行政機関及び介護施設等に対する全国的な質問紙調査を実施し、それぞれ分析した上で両者の結果を対照・統合した分析を行うことととした。 2020年度は、法令の施行状況の把握を含めた予備的な検討や文献調査を行いつつ、予備調査の側面を含む小規模調査を実施する予定であった。予備的な検討・文献調査については、後述「現在までの進捗状況」のとおり、2020年度内の国における施策誘導の状況や、2021年度からの介護報酬・基準省令改定の経緯及び改定内容の詳細を把握することができた。一方、調査の実施については、この施策誘導及び省令改定等の影響・効果が2021年度から生ずること、また新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い、行政指導と施設等の対応を対照させるという本研究の目的に照らした場合、年度における一連の動きの起点となる行政指導が中止もしくは大幅縮小されたことから、予備的な調査であっても2020年度中に実施することは適切でないと判断し、2021年度に実施することとした。ただし、予備的な検討の中から、主として省令改定と新型コロナウイルス感染症対策における奨励事項の側面から、当初想定に対して、調査対象及び内容に大きな変更を加える必要性が確認され、それらをもとに基本的な調査設計を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
身体拘束適正化を含む介護サービスの適正運営については、通常、年度の第一四半期において行政から集団指導等が行われ、その後施設等において各取り組みや体制整備を実施し、並行して実地指導が行われる。ところが、2020年度においてはそれら一連の動きの端緒となる集団指導が、多くの自治体において新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い中止もしくは書面資料掲示にとどまった。そのため、法令の施行状況や今後予定される省令改定等の動向把握、及び文献調査にまず注力した。その結果、大きな動きとして、2021年度介護報酬・基準省令改定において、身体拘束を含む高齢者虐待防止の体制整備が、3年間の経過措置付きで全介護サービスにおいて義務化されることとなり、その経緯及び意図を把握することができた。また文献調査の結果を含めて、地方行政における施設等への指導・支援施策実施状況の把握ニーズが高まっていること、施設等においては職場内研修の内容例示等により体制整備を促すこと等、国(厚生労働省)の施策誘導の状況も確認することができた。併せて、これらの動きは、2021年度から影響・効果をもたらすことも確認された。 一方、2020年度には、予備調査の側面を含む行政及び施設等に対する小規模調査を予定していたが、これらのことから2021年度に実施することとした。ただし、予備的な検討の中から、主として省令改定と新型コロナウイルス感染症対策における奨励事項の側面から、当初想定に対して、調査対象及び内容に大きな変更を加える必要性(例:体制整備の義務化の範囲・内容が広範であり調査対象等を拡大すべきこと、指導・会議・研修等の形態としてオンラインによるものを勘案すべきこと等)が確認され、それらをもとに基本的な調査設計を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
地方行政における施設等に対する集団指導については、2020年度終盤に、中止や単なる資料提示とどまらず指導の実効性を担保すべき旨国から見解が示されたため、2021年度においてはコロナ禍の状況にあっても一定程度進められるものと思われる。そのため、2020年度に当初予定していた予備調査の側面を含む小規模調査を2021年度に実施することとした。また、介護保険施設等に対する行政の実地指導マニュアルについて、2021年度半ば以降を目途に国から示される予定であるため、提示の時期を確認した上で、本調査として位置付ける全国調査を2021年度末もしくは2022年度当初に実施することとしたい。また、調査は「現在までの進捗状況」に示したように、2020年度から2021年度当初にかけての動向を踏まえた調査設計のもとに実施する予定である。
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Causes of Carryover |
発表を予定していた学会がコロナ禍により開催中止となり、参加費用が未使用となった。また調査実施の適期を2021年度と判断し調査開始を延期したため、調査に係る諸経費も未使用となった。以上の未使用分は2021年度に時期を延ばして使用する予定である。
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