2020 Fiscal Year Research-status Report
Verification of the relationship between formation of capabilities and activation in a broad sense for young women in need
Project/Area Number |
20K02293
|
Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
天野 敏昭 神戸大学, 国際文化学研究科, 協力研究員 (40736203)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大村 和正 大和大学, 政治経済学部, 准教授 (30571393)
熊本 理抄 近畿大学, 人権問題研究所, 教授 (80351576)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 生活困窮 / 就職困難 / 女性 / ケイパビリティ / アクティベーション / 社会的参入 / 職業的参入 / ジェンダー |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目標は、若年女性の生活困窮を当事者及び家族等の責任のみに委ねられない政策課題と捉え、「伴走型」「集団型」「自己解決型(自己解決への意識醸成と連帯的取組み)」の各支援が、当事者の社会的参入(自律)と職業的参入(自立)に重要だと考え、「ケイパビリティの形成」(潜在能力:自らが価値をおく福祉を実現できる選択可能な機能の組み合わせとその能力)と「広義のアクティベーションの実現」(職業訓練やジョブマッチにとどまらない、就労の前段階になる社会への参加意欲や就労に向けた活動などの変化にも着目)の取組みにより、当事者の意識・活動・成果の各レベルを通して主体性と共同性(連帯的取組み)を発現させ、社会的参入と職業的参入の双方を実現するプロセスを生成する可能性と課題を検証することである。 初年度の第一の目標は、「ケイパビリティ」と「広義のアクティベーション」の両概念の理論研究の動向を整理することであった。主に関係する文献等に依拠し、分析枠組み【多様な支援(伴走型、集団型、自己解決型)のもとで、≪ケイパビリティの形成→広義のアクティベーションの実現→非市場的な領域及び非制度と市場及び制度をつなぐ多様な生き方や働き方の選択と実践≫のサイクルをスパイラルアップさせる過程と重要性】を実証する分析枠組みの精緻化を継続している。 第二に、国内の男女共同参画機関及び支援組織等を対象にした質問紙調査を実施し、若年生活困窮女性の現状とそれへの対応の実態を把握する目標については、新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い、当初計画していた調査の実施が困難化したため、大阪府内の各自治体の「地域就労支援事業」と女性及び男女共同参画センター等の状況について、可能な範囲で把握することにとどまった。これらの機関では、自治体間での相談対応状況の違いがみられるものの、新型コロナウイルス感染症拡大により顕著な影響はみられない。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウイルス感染症の拡大の影響により、初年度に計画していた、国内の男女共同参画関係機関(約350箇所)及び各種資料やウェブサイトで捕捉できる支援組織等を対象にした質問紙による実態調査を行うことが困難化したことが大きな理由である。 本研究の主な問題意識は、若年女性の生活困窮問題に対する施策対応が進展しておらず、施策対応の地域差、ジェンダー間の非対称性や女性特有の課題も十分共有されず、支援先送りのまま中高年に移行するケースも多いことである。しかし、新型コロナウイルス感染症の拡大により、緊急を要する対応に迫られている可能性が高いと推測されたため、調査目的に沿った調査を行えないこと、また、調査客体の負担を軽減する必要性も高いと判断し、全国的な調査ではなく地域を限定して可能な範囲で調査することにとどめた。このため、当初の目的に合致した調査を実施できておらず、新型コロナウイルス感染症拡大の今後の動向を見極めながら、調査の実施可能性を検討し進めていく予定である。
|
Strategy for Future Research Activity |
2年目以降は、初年度に実施した、大阪府内の各自治体の地域就労支援事業及び女性及び男女共同参画センター等の状況について、相談者全般の状況の把握にとどまったため、引き続き、若年女性の状況を中心に実態を把握していきたいと考えている。また、初年度の経過から、生活困窮者自立支援の現状を把握する必要があることを認識したため、その動向の把握につなげていければと考えている。 初年度に実施できなかった、国内の男女共同参画関係機関(約350箇所)及び各種資料やウェブサイトで捕捉できる支援組織等を対象にした質問紙による実態調査については、新型コロナウイルス感染症拡大の影響に対する対応に加えて、コロナ禍後の展望を含めて、「ケイパビリティ」と「広義のアクティベーション」の両概念の観点から、支援の現状、課題、今後の展望を把握できる調査を実施できればと考えている。 2年目に計画している、国内と海外(韓国、英国、フランス)での聞き取り調査については、海外については当面実施することが困難だと考えられるため、海外の女性支援政策の検討を中心に進める予定である。国内での聞き取りについては、質問紙調査と並行して、メールでのやり取りを重ねたりウェブ会議などの方法で進めていければと考えている。
|
Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、国内外での聞き取り調査を行えなかったことが大きな理由で、このほか、初年度に計画していた全国での質問紙調査を実施できなかったこと、講師を招聘できなかったことなどの理由により、次年度使用額が生じた。
|