2021 Fiscal Year Research-status Report
社会的企業を通した「半福祉・半就労」支援策に関する日典比較研究
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20K02308
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Research Institution | Chubu Gakuin University |
Principal Investigator |
福地 潮人 中部学院大学, 人間福祉学部, 准教授 (00412833)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | スウェーデン / 障害者政策 / 障害者雇用 / 障害者福祉 / 社会的企業 / 障害者団体 / 協働関係 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度に引き続き,コロナ禍によりスウェーデンにおける現地調査が実施できなかった。よって,国内で入手できる資料を下に本研究テーマに関連するスウェーデンの障害者政策と障害者団体についての研究を進めた。 その成果を①5月の社会政策学会第142回(2021年度春季)大会にて,「『新自由主義的転回』の中の国家‐市民社会間関係の行方 ――スウェーデンにおけるLSS改革を事例に 」と題して報告した。この報告では,スウェーデンにおける2018年の障害者福祉改革案が同国の政府-障害者団体関係に未曽有の危機をもたらしたことに触れた。 さらに7月には,2020年度に投稿した②原著論文「障害者に対するアクティベーション政策」が掲載された北ヨーロッパ学会誌『北ヨーロッパ研究』17巻が刊行された。同論文では,本研究テーマが対象としているスウェーデンの障害者の就労支援策の重要な柱である賃金補助金制度の2017年改革について取り上げた。 10月には上記の学会報告を下に執筆した③原著論文「スウェーデンのLSS改革」を社会政策学会誌『社会政策』に投稿した。同論文では,危機に陥った政府-障害者団体関係が2021年度以降は再び協働関係に転じている点を指摘し,これを「関係のレジリエンス」と捉えた。同論文に関しては2022年2月,掲載決定の通知を受けた。 2022年3月には,④ローカルガバナンス研究会誌『ローカルガバナンス研究』に原著論文「新自由主義化するスウェーデン」を投稿した。スウェーデンにおいても近年,疾病・活動補償(障害年金)の裁定者数の激減やLSS改革における露骨な緊縮案の提示など,障害者政策に対する新自由主義の影響が大きくみられることを指摘した。以上のような今日のスウェーデンが置かれた状況は,本研究テーマを実施する上で看過しえない重要な社会経済的環境であることが改めて明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
2021年度には社会政策学会誌への原著論文の掲載が決定するなど非常に大きな成果もあった。しかしながら,2020年度に引き続くコロナ禍のため,現地調査の実施が不可能な状態が続いた。 よって夏季(7~8月)にはZoomを用いたリモート・インタビューの可能性を検討し、実施計画を立案した。しかし、計画実施の途上で、当初依頼を予定していた現地在住者の協力を得ることが、諸般の事情により困難であることがわかった。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年春時点でのスウェーデンにおける新型コロナウィルスの感染状況は大幅に抑制されており、同国政府も4月1日以降、欧州外諸国からの入国禁止措置を全面解除した。5月以降は新規感染者が見られない状態が続いており、コロナ禍前の社会が取り戻されつつあるように見える。しかしながら,本邦外務省によると,同国に対する査証免除措置の一時停止および査証発給の制限は継続している。 以上を鑑みると,本研究が計画している現地インタビュー調査の実現性は今年度に至ってもなお,困難な状況にあることは否めない。よって,今年度は以下の二つの方向で研究計画を進めることを検討する。 1)引き続き,Zoomによるリモート・インタビューの実施を検討する。6~7月に現地通訳兼調査コーディネーターの候補を募る。その上で調査時期・内容などの綿密な打ち合わせを行い,夏季から秋季にかけて実施する。 2)夏までに事態が好転すれば,改めて渡航の可能性を探る。その際の渡航時期は2023年の冬季を予定する。 なお,以上の2つの方向性に関わらず,今年度も引き続き国内で入手できる資料の分析を進め,しかるべき時期にその成果を公表する予定でいる。
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Causes of Carryover |
2020年度に引き続き,コロナ禍によりスウェーデンにおける現地調査が実施できなかったため,これに関わる旅費および人件費等の経費が消化できなかった。 今年度はZoomによるリモート・インタビューを実施予定であるため,この点で現在旅費として計上している予算を組み替え,通訳・調査コーディネート費として使用する。 なお,夏までにコロナ禍の情勢が好転した場合,冬季に渡航することを検討する。この場合は上述のような予算の組み換えは行わない。
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