2023 Fiscal Year Research-status Report
社会的企業を通した「半福祉・半就労」支援策に関する日典比較研究
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20K02308
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Research Institution | Chubu Gakuin University |
Principal Investigator |
福地 潮人 中部学院大学, 人間福祉学部, 教授 (00412833)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 労働統合型社会的企業 / スウェーデン / 市民社会政策 / ASF支援策 |
Outline of Annual Research Achievements |
当年度は引き続き、スウェーデンの労働統合型社会的企業(ASF)に対する支援策と、それらASFが置かれた環境に影響を及ぼしている市民社会政策について研究を実施した。 政策に関しては、同国の2009年市民社会法案策定以降の市民社会組織政策をめぐる動向について、2022年度のインタビュー調査の結果を援用しつつ、主に政府刊行物や障害者団体発行の資料を分析した。その結果、(1)スウェーデンの市民社会政策は2009年に確立して以降、市民社会組織(CSO)のサービス供給機能の強化に重点をおくようになったが、それらの政策効果は乏しく、(2)CSOの福祉サービス供給面でのシェアは低いこと、その政治的背景として、(3)公共部門の解体と私企業の商圏拡大を狙う右派と、公共部門の可能な限りの維持を志向する左派との間で、サービス供給を担おうとするCSOが宙づり状態になっていること、(4)近年はむしろ同国のCSOに伝統的なアドボカシー機能をガバナンスの中心にすえた北欧型のアソシエーティブ・デモクラシーが大きく進展していることがわかった。これらについて原著論文としてまとめ、『北ヨーロッパ研究』誌に投稿し、掲載された。 また、ASF支援策については、前年度の(1)BASTA!、(2)M29社会的企業センター、(3)Unicusの三社に対するインタビュー調査結果を分析した。その結果、同国のASFは①可能な限り市場での自主販売事業を強化しようとしていること、②中間支援組織による認証評価制度により知名度の向上を図っていること、③労使協約によって、従業員の労働条件の維持を図っていること、が明らかとなった。これらについて調査報告書としてまとめ、『中部学院大学研究紀要』に投稿し、掲載された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究ではこれまで、スウェーデンの労働統合型社会的企業支援策として、とくに国家レベルでの取り組みに焦点を当てて、把握してきた。その結果、明らかになったのは次のようなことである。 すなわち、同国では、特有のブロック政治における保革の対抗関係の中で、労働統合型社会的企業を含めた市民社会組織に対し、十分なサービス供給上の役割が与えられてこなかった。 そのような環境下で、各ASFは国・地方自治体からの障害者雇用訓練委託事業に頼ることなく、物品・サービス販売などの独自の事業に注力することで、経営の安定化と生き残りを図ろうとしていた。 しかし、障害者雇用訓練委託事業の実施はASFのアイデンティティにも関わる重要性を持っている。たとえ競争市場で生き残ることができたとしても、ASFが市場化-商品化と引き換えに、そのようなアイデンティティが軽視されてしまうのは本末転倒ともなろう。 このようなASFのジレンマを解決する上で重要となるのは、各地方自治体の役割である。本研究でもすでに2022年度には、ヨーテボリ市にリモート・インタビューを実施しているが、十分な準備ができていなかったこともあり、上述のような質問事項については存分な回答が得られていない。また、ストックホルム市およびマルメ市については本年度、複数回のリモート・インタビューを依頼したが、いずれも時期が合わず、実現できていない。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では引き続き、上述のようなASFが抱えるジレンマの解決策について、探求していく予定である。具体的には、ストックホルム市、ヨーテボリ市、マルメ市の三大都市を対象に、地方自治体で独自に実施されているASF支援策について明らかにしたい。 本年度はこれらのコミューンに対する再依頼を含めて、リモート・インタビューの実施と結果分析に努めたい。
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Causes of Carryover |
スウェーデンにおける労働統合型社会的企業の環境が大きく変わりつつあるなか、とくに地方自治体のASF支援策については継続して研究を行う必要がある。2023年度も、いくつかのコミューンにリモート・インタビューの依頼を行ってきたが、いずれのコミューンの担当者とも日程が合わなかった。次年度も改めて依頼を行う予定であるため、使用額が生じる結果となった。なお、用途としては、主にインタビュー・コーディネート料金、通訳料金を予定している。
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Research Products
(2 results)