2020 Fiscal Year Research-status Report
障害児をもつ家族と教師の協働的アプローチによるFQOLに関する研究
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20K02316
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Research Institution | Kawasaki University of Medical Welfare |
Principal Investigator |
岡本 邦広 川崎医療福祉大学, 医療福祉学部, 准教授 (20632722)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | FQOL / 協働的アプローチ / 行動問題 / 家族との協働 / 障害 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、障害児の保護者と大学教員による協働的アプローチを実施することにより、FQOL(Family Quality of Life)が向上するか検討することを第一の目的とした。さらに、経年によるFQOLが維持されるか検討することを第二の目的とした。 研究1年目は、以下3つの研究を遂行した。1つ目は、障害児の家族と専門家のパートナーシップとFQOLを検討した研究レビューである(岡本,2020)。岡本(2020)は選定基準を満たす2000年以降の22編の学術論文を分析した結果、20年間でFQOLに寄与するパートナーシップが蓄積されていることを示唆した。結果から今後の課題として、複数回答者によるFQOL測定の研究の蓄積、ならびに、経年によるFQOL測定の研究が必要であること、さらにFQOLの予測変数となる専門家の家族への関与を分析する必要性を指摘した。2つ目は、特別支援学級に在籍する児童生徒をもつ保護者が特別支援学級担任から受けるサポート内容の検討、ならびに、FQOLに寄与するサポート内容の検討である。X市特別支援学級親の会の会員を対象に、2020年11月~2021年1月にかけて質問紙調査を実施した(データ分析は、研究2年目に実施)。3つ目は、行動問題を示す障害児の保護者と大学教員による協働的アプローチを実施することにより、家庭文脈に適合した支援が提供するか検討した。対象は、発達障害のある幼児A、B、C(このうち1名は診断なし)や小学生Dをもつ保護者4名であった。協働的アプローチは、マニュアル(岡本,2018)を活用し、支援対象の行動問題や支援手続きの選定内容を書面化したものを郵送により行われた。支援対象の標的行動は、日常生活や登園、登校に関するスキル獲得であった。研究1年目終了時は、支援対象の標的行動に対する支援手続きに関する協議を行う段階まで遂行した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
以下の3つの理由が挙げられる。 ・本研究を遂行する上で基礎となる文献レビューを行い、障害児の家族と専門家によるパートナーシップとFQOLの関係を分析した研究の現状と課題を明らかにすることができた。 ・特別支援学級に在籍する児童生徒をもつ保護者が特別支援学級担任から受ける支援に関する質問紙調査は、本研究結果の妥当性を高めるために実施した。研究計画立案当初は、この質問紙調査の実施は想定していなかったが、実際には質問紙調査を実施し回収までできた。 ・障害児の家族と大学教員による協働的アプローチは、本研究の中核的な位置付けとして実施した。協働的アプローチは、①標的行動の選定、②支援手続きの選定、③支援実施の各段階に分けられるが、事例によっては②あるいは③段階まで遂行することができた(研究計画当初、研究1年目は対象者の同意取得までを想定していた)。 上記の理由から、現段階においては「おおむね順調に進展している」と判断したが、上記3つ目に記した理由にある協働的アプローチの遂行について、協働的アプローチの手続きは煩雑であり、対象児の行動に変化が見られなかったり、保護者による支援手続きにかかる負担が大きかったりする場合は、研究の辞退が生じる可能性がある。
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Strategy for Future Research Activity |
・特別支援学級に在籍する児童生徒をもつ保護者が特別支援学級担任から受ける支援に関する質問紙調査については、SPSS Ver27を用いて分析し、ポスター発表や学術論文の投稿を行う。 ・障害児の家族と大学教員による協働的アプローチについては、障害児の家族に対する家庭文脈に適合した支援提供を目的に、研究1年目からの継続した研究を遂行する。また、家庭文脈に適合した支援提供を行った後は、対象者にFQOL測定を依頼し、協働的アプローチ実施前後のFQOLを比較する。さらに、その測定から6か月後に対象者に再度FQOL測定を依頼し、それ以前のFQOL値と比較検討する。 しかしながら、「現在までの進捗状況」の理由に示したとおり、協働的アプローチの手続きは煩雑で、研究途中でも辞退者が生じデータ収集が困難となり、結果的に当初の研究が遂行できなくなる可能性が考えられる。 この場合の対応策として、研究目的および研究方法の見直しを一部行い、次のように変更する。すなわち、障害児の保護者がこれまで受けてきたサービスのうち、どのサービスが、あるいはサービスのうちの何がFQOLに寄与するかを、障害児の保護者への聞き取り調査によって明らかにする。聞き取り調査は協働的アプローチに比べ、障害児の保護者にとって、精神的および時間的な負担は低減すると考えられ、結果的に収集できるデータの割合は高まることが想定される。
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Causes of Carryover |
次年度使用が生じた理由 コロナ感染拡大予防の観点から当初予定されていた関連学会への出張、ならびに、障害児の保護者支援に携わる専門家への聞き取り調査に関する出張がなくなり、出張費が予定より少額になった。 使用計画 上記に示した学会ならびに聞き取り調査に関する出張旅費(例年並みに実施された場合)、データ分析用のパソコン購入、関連書籍の購入
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