2022 Fiscal Year Research-status Report
就労支援事業所が求める就労能力と精神障害者就労能力のマッチングツールの開発
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20K02317
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Research Institution | Kurume University |
Principal Investigator |
福浦 善友 久留米大学, 医学部, 講師 (00572942)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 精神障害者 / 就労継続能力 / 尺度 / 信頼性 / 妥当性 |
Outline of Annual Research Achievements |
2022年度は,2021年度に明確にした精神障害者の就労能力の概念を用いて,就労支援専門家10名の協力を得て質問紙項目を作成し,精神障害者が就労継続を可能にするための就労継続能力尺度を開発し,その信頼性と妥当性の検討を行った. 就労継続能力を測る具体的な内容が明らかになることで,精神障害者自身が就労継続に向けて自分自身の現状を理解し取り組むことができる.また,精神障害者だけではなく,支援者が就労継続に必要な能力を共通認識し共同して職場環境を整えるツールになると考えた. 対象は障害者職業・生活支援センター400箇所に2022年4月1日時点で登録している10代から50代までの精神障害者2000名を対象に質問紙調査を実施した. 結論として,1.精神障がい者の就労継続を可能にするための尺度として,自己調整,仕事専念,環境調整,誠意表出の19項目4因子で構成され,信頼性・妥当性を確保した就労継続能力尺度が作成できた,2.就労継続能力の下位尺度4因子と就労継続の成果の下位尺度5因子間の相関は,すべての下位尺度間で関連し,就労継続能力と転職の有無の間で関連していることが明らかになった,3.精神障がい者が就労継続能力尺度の活用は,個別的な仕事への取り組み方だけではなく,職場の労働者が精神障がい者の特徴を把握したり接し方のヒントとなる.また,既存の支援を支える補助的なツールとしての活用が期待される. 交付申請書の研究実施計画では,令和4年度に質問紙の信頼性・妥当性の検討を目標としており計画通りに進行している.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は,就労支援事業所が求める就労能力と精神障害者の就労能力のマッチング項目(質問項目)の程度を明らかにし,マッチングツールを作成することが目的である. 研究期間は4年間とし,交付申請書の研究計画書では,令和4年度に作成した質問項目の信頼性および妥当性の検討を掲げており,実際に因子分析にて精神障害者の就労継続能力の共通因子を探り出し信頼性と妥当性が確保されていることを確認した. 以上のことから,本研究はおおむね順調に進展していると考える.
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の目的は,精神障害者の就労能力を明らかにし,就労継続に向けて実用的なマッチングツールを開発することである.今回研究計画に基づき精神障害者の就労継続能力の尺度開発を行い就労の場で用いる能力として4因子をもつ尺度を明らかにした. そして,精神障害者の就労継続の影響を明らかにするために構造モデルを検証した.その結果,就労継続能力と個人的な生活基礎能力を合わせた能力が,就労継続の成果に影響することが明らかになった.就労継続支援の検討には,就労の場だけでなく生活基礎能力を含めた就労継続の個人的な能力を評価する必要がある.つまり,開発していた就労継続能力尺度は,就労の場で用いる能力のみを評価する尺度であり,現在の尺度では不十分である.その為,精神障害者の生活基礎能力と就労の場の就労継続能力を合わせた修正版の尺度開発が必要であると考えた. 交付申請書の研究実施計画では,令和5年度は事業所の管理責任者と働いている精神障害者に質問紙調査をして質問紙項目の一致の程度を明らかにすることを予定としていたが,生活基礎能力も合わせた就労継続能力尺度が重要であることから研究計画の微調整が必要となった. したがって,今後マッチングツールを開発するためにも,令和5年度は精神障害者が就労継続するための生活基礎能力と就労の場における就労継続能力を含めた能力を明らかにし,その能力を測る改訂版の尺度の信頼性と妥当性を検証する.
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Causes of Carryover |
2022年度は,尺度開発を行うことを目的にアンケート調査を実施し,分析手法及び結果の信頼性を高めるため分析専門業者に結果の確認と指導を依頼した.また論文を海外ジャーナルに発表するため翻訳業者に翻訳と校正を依頼した.さらにオープンアクセスに伴い投稿料は発生した.海外の為替の変動に伴い投稿料の値上がりがあった.これらのことから,前倒し請求を行った.しかし,翻訳業者への支払いについては校正料金のみであったため,前倒し請求を全額使用にまでは至らなかった.
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Research Products
(3 results)