2022 Fiscal Year Research-status Report
母親の就労環境がもたらす「時間の貧困」が子どもの生活習慣に及ぼす影響
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20K02323
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
冬木 春子 静岡大学, 教育学部, 教授 (60321048)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 母親 / 父親 / 育児 / 就労 / 時間貧困 / 幼児 |
Outline of Annual Research Achievements |
「社会の24時間化」やグローバライゼーションの進展を背景に、「非正規」という就業形態や、早朝や夜間といった「非典型時間帯」での就業が増えており、幼児を育てながら働く母親において「時間貧困」に陥る可能性が想定される。今年度は、昨年に引き続き、静岡県の地方都市において、幼稚園に子どもを通わせている親を対象に質問紙調査を行った。幼稚園は規模に着目して5園選定し、535世帯の父母から回答を得た。 幼稚園に子どもを通わせている母親では、「専業母親」は38.6%で最も多かったももの、「非正規職員」は38.0%、次いで「正規職員」は12.4%であり、有職の母親が多くなっていた。その有職母親の就業時間では、子どもが幼稚園にいる間に働く母親が約90%であり、早朝や夜間といった「非典型時間帯」、さらには「交代勤務」で働く母親は約10%であった。母親を「典型時間帯労働者」「非典型時間帯労働者」「専業母親」の3群に分けて、子どもとのかかわりとの関連を分析した。子どもとのかかわりは、「子どもとの身体を使った遊び」「外遊び」「子どもの疑問に向き合う」「絵本の読み聞かせ」「早寝早起きをさせる」「栄養バランスに気を付けた食事をさせる」から捉えた。 結果では、「身体を使って子どもと遊ぶ」「外で遊ぶ」「絵本の読み聞かせ」「早寝早起きをさせる」では、「非典型時間帯労働者」である母親の遂行頻度が最も低く、統計的にも「典型労働者」の母親及び専業母親よりも低いことが明らかになった。夜間や早朝といった「非典型時間帯」での就労が母親と子どもとのかかわりに影響を及ぼしていると考えられた。 幼稚園に子どもを通わせている母親においては、民間の教育サービスを積極的に活用する母親と活用しない母親に分けられた。地方都市においても、民間教育サービスや通信教育が広まっており、家庭教育の外注化に積極的な母親がいることも見出された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウイルス感染拡大により、対象とする幼稚園での調査実施が延期になったこともあり、調査の時期が遅れたことによる。今年度に大規模調査を実施することができたことから、次年度には分析、まとめ、公表を行い、遅れを取り戻すつもりである。
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Strategy for Future Research Activity |
幼稚園に子どもを通わせている父母を対象にした調査データを分析していく予定である。具体的には、①母親の就業形態に母子のかかわりがどう影響するか。その際、父親の育児遂行はどの程度影響するのか。②母親の就業形態によって、民間教育サービスの利用は異なるのかである。これらを通して、子どもの健全な発達に資する「女性活躍」促進政策の在り方について論じていくつもりである。 一方、親の就業形態や就業時間の「多様性」を考慮するならば、保育所に子どもを通わせている父母も対象にした調査を行う必要性があることから、調査の実施の可能性も探っていく。また、わが国よりも女性の就労率が高い米国における「女性活躍」促進政策、子育て支援政策について情報を収集し、本研究のまとめの参考にすることも予定していいる。
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Causes of Carryover |
日本家政学会、日本保育学会への参加を予定していたが、新型コロナウイルス感染症の拡大によって、オンライン開催となり、想定していた旅費が未使用になったことによる。 また、当初はインターネット調査を行う予定であったが、静岡県内の幼稚園の全面的な調査協力を得ることが可能となったため、外部機関に委託する調査費用経費が未使用になった。また、静岡県内を調査フィールドとしたため、旅費に関する経費も少なく済むこととなった。 さらに、勤務校において、男女共同参画推進室による研究補佐員の雇用が認められたことによって、調査補助にかかる謝金が未使用になったこともある。 次年度は、調査対象者の就業形態や就業時間の「多様性」を確保する必要もあることから、未使用になった助成金を用いて、同じ調査地域の保育所において、同様の調査を行うことを計画している。
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