2022 Fiscal Year Research-status Report
麻痺性貝毒の無毒化を指標とした野菜の新規機能性の検索と調理法の開発
Project/Area Number |
20K02335
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Research Institution | Kobe Women's University |
Principal Investigator |
橋本 多美子 神戸女子大学, 家政学部, 准教授 (60248325)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 野菜 / 麻痺性貝毒 |
Outline of Annual Research Achievements |
毒化二枚貝(PSP)に野菜の抽出液を添加し、37℃で反応させた場合や野菜を生で添加した条件下で、一部の野菜において毒量が減少することが明らかとなった。そのため、野菜に含有される酵素や特有の成分が毒の分解等に関わっている可能性が示唆された。令和4年度は、pHや酸化還元電位を測定し、毒量との相関を調べた。さらに、減毒効果が高い野菜類に含まれる成分を毒化貝に添加し、減毒効果を検討した。 28種の野菜を磨砕したものを試料とし、酸化還元電位およびpHの測定を行った。野菜28種のpHは4.4~6.8と弱酸性の範囲で、毒量および毒力ともにpHとの相関は認められなかった。また、ORP値は-60~300mvとなり、還元力が強いものと弱いものに分けられた。ORP値の高低が毒化二枚貝の毒量あるいは毒力の減少に影響している傾向はみられなかった。 さらに、毒化二枚貝(PSP)の減毒効果を示した野菜の特有の成分(ポリフェノールおよび硫化物)を毒化二枚貝に1:1の割合で添加し、37℃で30分間反応させ、麻痺性貝毒検査法に準じて抽出した溶液をHPLC分析に供した。毒化二枚貝のpHは5.9で、野菜の特有成分を添加した場合のpHは5.7~6.1となり、添加物の影響はなかった。一方、使用した毒化二枚貝の毒力は、90±18.4MU/gであった。ポリフェノール添加で64±28.3MU/gになり、硫化物の添加により40±17.8 MU/gまで低下した。PSP組成では、ポリフェノールまたは硫化物を添加した試料において、ゴ二オトキシン(GTX)1と4の割合が低下し、ゴ二オトキシン(GTX)2と3の増加が認められた。 以上より、野菜そのものでは減毒効果が高いが、野菜の含有成分であるポリフェノールや硫化物において減毒は認められたものの、毒力として50%程度の減少にとどまったことから、単独の成分で減毒するのではなく、複数の成分が関わり毒の分解等が生じている可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
麻痺性貝毒で毒化した二枚貝の減毒の要因を調べることを目的として野菜の酸化還元電位を測定したが、毒量と関係を明らかにすることができなかった。さらに、減毒効果の高い野菜の特有成分を毒化二枚貝に添加し、減毒効果を調べたが、毒量の低下がみられるものの減毒には他の要素も影響していることが示された。令和4年度では、有効成分の同定を行うことができなかった。そこで、引き続き野菜の特有成分や酵素の添加実験、調理条件を検討することで減毒に影響する要因を特定する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
毒量を減少させる野菜に含まれる成分の一部について、毒量の減少が認められたが、複数の成分や条件が関わり毒量が減少すると考えられた。そこで、減毒効果の高い野菜に含有される成分、さらに酵素添加実験を行い、減毒の要因を調べる予定である。
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Causes of Carryover |
実験が予定通りに進まなかったため、予算を使い切ることができなかった。そのため、研究期間を延長して研究を続ける。
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