2020 Fiscal Year Research-status Report
生活場面から就業場面への円滑な移行を意識した学生向け安全衛生教育の実践と評価
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20K02337
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Research Institution | The Ohara Memorial Institute for Science of Labour |
Principal Investigator |
松田 文子 公益財団法人大原記念労働科学研究所, 研究部, 特別研究員 (40399340)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
池上 徹 公益財団法人大原記念労働科学研究所, 研究部, 特別研究員 (60726123)
山村 昌代 公益財団法人大原記念労働科学研究所, 研究部, 協力研究員 (80726109)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 安全 / 健康 / 衛生 / 若年者 / 大学生 / カリキュラム / 教育手法 / 生活場面 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、「企業」「学校教育現場」「安全衛生関係の有識者」が連携する枠組みを用いて、実践的な効果検証も含めた、学生向けの安全衛生教育の手法を確立し、円滑に生活場面から就業場面への橋渡しをすることである。具体的には、学生を対象とした安全衛生教育プログラムを構築、実践し、教育効果を検証する方法を開発していく。 COVID-19の影響もあり、オンライン教育が様々なリスクを減らすツールとして機能する場面が急激に増えてきたことから、これまで対面実施を想定していた安全衛生教育プログラムの作成方針についても再検討を行った。次に、中学校高校の教員9名、大学生17名へのヒアリング調査を実施した。併せて、全国の大学の公開シラバスの記載内容から大学教育では安全衛生がどのように取り扱われているのかを調査した。 教員へのヒアリングでは、各教科での教育を通して実施している安全や健康に関わる教育内容、教育の際に気を付けていることについて聞き取りをした。結果として、安全に関する内容が中心となり、健康についての内容はほとんど挙がっていないこと、シラバスに記載が少ないこと、先生手作りの手順書がよく活用されていること、経験値がないが故に出来ると思いがちな生徒について、実際に過去の先輩方が起こした事故の話を伝えるなど、より生徒が事故に対するイメージをしやすくなるように説明していること、「学校では失敗から学んでほしいと思うが、今は保護者が生徒を守ってしまう」といった課題もあることが明らかになった。大学生へのヒアリングでは、記憶に残っているヒヤリハット経験、記憶に残っている安全衛生教育、その課題と改善点等を聞き取りした。結果として、防災、交通安全などを中心に、各教科、行事、部活動などでの体験のほか、安全というキーワードから情報セキュリティー、フィッシング詐欺などを想起したものも多く見られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2020年度は、COVID-19の影響もあり、研究の方針も余儀なく変更を迫られた。とりわけ、オンラインが教育の中心的なツールとして機能する場面が急激に増えており、これまで、従来の研修教育のように対面を想定していた安全衛生教育プログラムの作成方針についても再検討を行った。具体的には、オンラインでの教育における利点、ツールの検討、システム的な課題、健康上の課題などを、学会等での情報収集や意見交換を通じて行った。動画教材を試行し、作成のためのノウハウの蓄積に務めた。 ヒアリング調査では、就業の受け手となる企業、就業の送り手となる教育現場へのヒアリングを予定していたが、企業側のヒアリングはCOVID-19の影響もあり困難であったため、教育場面へのヒアリングを拡張し、実際に教育を受ける側の学生、中学校高等学校の教員へのヒアリングを展開した。当初の研究計画にはなかったが、全国の大学において、どのような科目において、安全衛生の考え方を学ぶ機会があるのかを、公開されているシラバスから調査し、就職前の学生に対して、どのような教育が行われ、何が課題、不足なのかを検討する基礎資料とした 当初の予定どおり進捗しなかった部分もあるが、それ以外の取り組みを実施たことで、全体的に見れば、概ね順調と言えると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度は、主に、①オンラインにも対応できる安全衛生教育プログラムの作成方針についての検討、②中学校高校の教員へのヒアリング調査、③大学生へのヒアリング調査、④大学教育における安全衛生の取り扱われ方の調査、を実施した。 2021年度は、引き続き、オンラインに対応した安全衛生教育プログラムの作成方針についての検討を進めるとともに、その知見をもとに教材を作成し、オンライン型を含めた実践を試行する。この実践経験をもとに、教育手法の確立に努める。並行して、大学教育における安全衛生の取り扱われ方の調査を継続し、課題の洗い出しを行う。また、COVID-19の影響もあり2020年度は実施を見送った企業人へのヒアリングを実施する。 2022年度は、その教育手法を展開しながら、その教育効果を測る新しい手法についても検討していく。
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