2021 Fiscal Year Research-status Report
嚥下困難者向けとろみ付液体食品用の粘性評価システムの構築と誤嚥防止安全基準の確立
Project/Area Number |
20K02340
|
Research Institution | Muroran Institute of Technology |
Principal Investigator |
吉田 雅典 室蘭工業大学, 大学院工学研究科, 教授 (70282994)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 非ニュートン粘性 / 粘弾性流体 / 液体食品 / 嚥下 |
Outline of Annual Research Achievements |
流動実験に基づく粘性評価法の検討 昨年度設計,試作した,溝型の流路に障害物としての円柱を取り付けた構造の嚥下模型を,ゲートにより流れを制御して用いた.グリセリンと水を,割合を変えて混合した液すなわち,ニュートン粘性(粘度)が異なる液を試験液とした.それらの試験液について,模型内の流れの模様を撮影し,液先端の速度を決定,液の流れの速度を経過時間または流路位置の関数として解析した.解析結果に基づき模型の設計の良否を評価した.本模型操作による流動実験は,正常な嚥下と誤嚥を特徴付ける挙動の相違を与えた.また,実験では液の粘度による流れの相違が観測された.実験データの整理においては,流体工学的な無次元数である摩擦係数とレイノルズ数による関係が見出された.これらの関係によれば,本システムは液のとろみ(粘性)の評価に測定器として利用できることが示唆された. システムの医療現場での試用 看護や介護の医療現場で取り扱われている,とろみ調整剤によりとろみを付けた液体食品を調査,系統的に整理し,それらを対象に上述のシステムによる粘性の評価を行うにあたっての準備を行った.現場で用いられている調整剤は第1世代,第2世代,第3世代のものに分類される.それぞれの調整剤によるとろみ液は,濃度に依存して異なる非ニュートン粘性をもち,併せて弾性を発現することを,回転粘度計によるレオロジー測定を通して定量的に明らかにした.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究はおおむね計画どおりに進めることができた.嚥下模型の仕様をそれの操作方法とともにほぼ決定し,模型内の液の流れを主に粘度により記述する関係を見出した.液の流れに及ぼす弾性の影響を調べるために現在,看護や介護の医療現場で取り扱われている,とろみ調整剤によりとろみを付けた液体食品の調査,系統的な整理(とろみ液についてのレオロジー測定)を続けている.
|
Strategy for Future Research Activity |
システムの医療現場での試用 看護や介護の医療現場で取り扱われている,とろみ調整剤によりとろみを付けた液体食品の調査,系統的な整理を続行するとともにそれらを対象に上述のシステムによる粘性の評価を行い,システムの正当性を確認する.その上で,評価の過程においてそれぞれの液で観測される液流速や剪断速度の値から適用の可否を判定し,システムが対応できる範囲を決定する. システムによる誤嚥の表現 測定器における流れについて液流速の変化を実際の咽頭部での速度変化と比較しながら,誤嚥の発生と防止の観点から解析し,収集したデータを用いて科学的に有益な知見を引き出すことを試みる.とろみ付き液体食品がもつ粘性または弾性が誤嚥防止にどのように作用するかを考察する.システムによる誤嚥の表現を通して求められる嚥下困難者にとって安全な粘度値から,医療現場で経験的に用いられている定性的なとろみの程度を再考するとともに,とろみの程度を定量的に表示する基準値を決定する.
|
Research Products
(2 results)