2022 Fiscal Year Annual Research Report
アカガイが鉄欠乏性貧血の改善効果を有する加工食品としての可能性の研究
Project/Area Number |
20K02341
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
樋口 智之 弘前大学, 農学生命科学部, 准教授 (80597469)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | アカガイ / ヘム / 鉄 / 鉄欠乏 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究はアカガイの摂取による鉄欠乏状態の改善の可能性を検討している。これまでは、鉄を初めとした無機質の組成に加えて腸管吸収に優れているヘム鉄の含量を明らかにした。さらに加工処理によるアカガイ中のヘム鉄含量に対する影響について検討し、高温での長時間加熱やクエン酸との共存によって、未処理よりも有意に低下することを明らかにした。今年度は加工処理のヘム鉄含量に対する影響をより詳細に調べるとともに、動物実験によってアカガイの摂取による鉄欠乏状態に対する影響について検討した。 加熱によるヘム鉄の減少に伴い、非ヘム鉄の増加が認められた。また加熱によって発生したドリップにヘム鉄が流出する現象は観察できず、加熱前後でヘム固有の吸収スペクトル波形が変化したことから、アカガイ・ヘムは加熱によってヘム分子上の変質が起こり、ヘムから鉄が遊離したことによって起こった可能性がある。またクエン酸やEDTAをアカガイと共存させるとヘム鉄含量は低下した。このことから金属キレート作用を有する物質との相互作用によって、ヘム鉄が非ヘム鉄する可能性が示唆される。 鉄欠乏食を摂取させ続けることによって鉄欠乏状態にしたWistar雄性ラットにアカガイ凍結乾燥粉末を5%配合した飼料を3週間与え、その後ヘマトクリット値、血清鉄、ヘモグロビン量、トランスフェリン飽和度を測定した。その結果、鉄欠乏状態のラットに比較して有意な差ではなかったが改善傾向が見られた。 以上より、アカガイは鉄欠乏状態を改善する可能性があるが、加熱の方法など加工や調理方法には配慮が必要であると思われる。
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