2020 Fiscal Year Research-status Report
安心・安全を実現する蓄光布の災害を想定した視界不良時における視認性に関する研究
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20K02351
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Research Institution | Mukogawa Women's University |
Principal Investigator |
竹本 由美子 武庫川女子大学, 生活環境学部, 講師 (90581926)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
谷 明日香 四天王寺大学短期大学部, その他部局等, 准教授 (30413446)
小野寺 美和 甲南女子大学, 人間科学部, 講師 (90523762)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 蓄光布 / りん光輝度 / 災害 / 視認性 / 文字識別 |
Outline of Annual Research Achievements |
予期せぬ災害に伴う停電や火災による視界不良時は、救助者及び被災者相互に認識が難しい。そこで、身に着けているものに自ら発光する「蓄光布」を用いれば、暗所での迅速な対応に有効な手段となる。そこで、これまでの研究を発展させ、災害時を想定した実用性について検証する。蓄光布による文字識別の有効性、立体的活用による高視認性と燐光輝度の持続性の改善、実際に蓄光布が役割を果たす災害時を想定した視界不良時における視認性評価を試みる。さらに、実用可能な高視認性衣服を製作し、暗所での着用性と視認性を検証する。これらを蓄光布の評価基準の設定に活かすことで、人の安心・安全を実現できる蓄光布の利用拡大に繋げる。 避難誘導標識等に使用されている蓄光素材は、電力を必要とせず、日中の太陽光を蓄積することで暗所において長時間の発光が可能である。この蓄光素材を衣服などの繊維製品に利用できれば、予期せぬ災害に伴う停電や火災による視界不良など、突如起こった災害時の暗闇の中でもヒトやモノの存在が認識しやすくなり、災害救助や避難の際に迅速な対応が可能になる。これまでは、まだ活用されていない蓄光糸を蓄光布に製織し、その消費性能と視認性を検証してきた。本研究では、さらに高視認性と燐光輝度の持続性の改善を試み、実際に蓄光布が役割を果たす災害時を想定した視界不良時における視認性評価をおこない、実証実験をもとに蓄光布の実用性を検証することが目的である。 本年度は、暗所における蓄光機能を利用した文字識別の有効性の検証と、立体的活用による高視認性と燐光輝度の持続性の改善を試みるため、実験試験布とする蓄光布を製織し、日常の様々な光源を照射した場合の燐光輝度とその持続性を測定した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
購入した照明シミュレート装置(THOUSLITE-LEDCube)を用いて様々な波長を蓄光布に照射し、りん光輝度が最も強く得られる波長の種類を特定することにした。予備実験をおこなったところ、設置していた暗所環境と実験計画では、測定過程で測定試料となる蓄光布に他の光が照射される可能性があったため、暗室内にある照明シミュレート装置と輝度計のみをさらに暗幕で覆うことによって暗所で安定して長時間の測定が可能となった。 波長を順次変えながら測定をおこなったところ、低波長域の光によってりん光輝度が高くなることがわかった。室内や屋外の照明、太陽光、月光、車のライト等、日常の各種光源を照射計で計測し、それらの波長分布の情報を分析するとともに、照明シミュレート装置で再現した光源を蓄光布に照射して、りん光輝度を測定中である。照明シミュレート装置による蓄光布のりん光輝度測定は、蓄光布がりん光しない状態から実施可能になるため、1サンプルの測定にかなり時間を要すため、測定工程の見直しも検討している。 また、暗所において、文字を速やかに認識できることは、迅速な行動や対処にも繋がることから、蓄光素材の視認性だけでなく、りん光する文字の識別性についても検証する必要がある。そこで、蓄光を利用した暗所における文字の識別の有効性を検証するため、蓄光布に識別が難しい文字列を刺繍した試験布(文字以外がりん光)と、各色の布に蓄光糸で文字刺繍をした試験布(文字がりん光)を研究協力先から作製提供していただいた。これらについても上記で述べた実験環境でりん光輝度の測定ができており、今後はりん光する文字の視認性を被験者に評価してもらう準備を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
各種蓄光試験布の視認性と、りん光する文字の視認性に関して主観的データを得るため、分光放射照度計及LEDCube&Navigatorを使用し、日常の各種光源を照射した場合の視認性評価を被験者に対しておこなう。被験者実験については、新型コロナウィルス感染状況を鑑み、実験時期を検討し、実験が難しい場合は、災害時を想定した視界不良時の蓄光布の視認性評価のための実験装置を準備する。視界不良を模擬した実験装置は、透明な密閉BOX内に一定濃度の煙を充填させ暗幕内に煙霧環境をつくり、煙濃度は分光放射照度計を用いて測定する。この煙霧環境を透して蓄光試験布の視認性を被験者に評価してもらうため、実験環境を整える。
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Causes of Carryover |
当初使用予定であった蓄光布作成費用が、当年度はサンプル作成までとなったため、作成費用を要さず残額が生じた。次年度は現品を購入することになる。
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