2021 Fiscal Year Research-status Report
軽度マグネシウム欠乏食投与による骨代謝への影響とその機序の解明
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20K02360
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
石島 智子 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 特任助教 (80568270)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | マグネシウム欠乏食 / 骨代謝 / 骨密度 / 骨代謝マーカー / ラット |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、現在の日本人の マグネシウム(Mg) 不足状態を反映するような軽度の Mg 欠乏食を投与したラットの骨代謝への影響とその機序について、生化学的解析、物理的解析、網羅的遺伝子発現解析を行い包括的に理解することを試みる。 飼料はAIN-93G飼料組成に基づき作製し、正常食のMg濃度0.05%を推奨量(充率100%)と仮定し、Mg欠乏食は、現在の日本人のMg摂取量の推奨量に対応する充足率約70%を想定した0.04%Mg欠乏食、その半量の0.02%Mg欠乏食(充足率40%)、さらにその半量の0.01%Mg欠乏食(充足率20%)に設定した。3週齢のWistar系雄ラットを正常食で1週間予備飼育後、それぞれの飼料で2週間本飼育を行った。昨年度は、生化学的解析のうち血清中ミネラル濃度、ミネラル代謝関連ホルモン、そして骨代謝マーカーの測定を行った。 今年度は、各Mg欠乏食投与による骨密度への影響について解析を行った。骨密度の測定は、大腿骨において、実験動物用X線CT装置(Latheta LCT-100 Lite、 日立アロカメディカル(株))を用いてqCT法により行った。測定した骨密度を構造別(全骨、皮質骨、海綿骨、骨梁)および部位別(全長、遠位部、中間部、近位部)に分けて解析した。その結果、0.02%Mg欠乏食投与により中間部の皮質骨密度および骨梁密度が増加傾向を示した。また0.01%Mg欠乏食投与により近位部の骨梁密度が増加傾向を示した。 重度(正常食の1/10量)Mg欠乏食の2週間投与では、軽度で上昇傾向が見られた中間部の皮質骨密度および骨梁密度は有意に低下し、また軽度で上昇傾向が見られた近位部の骨梁密度に変化は見られなかった。このことから、軽度のMg欠乏食投与を行ったラットの大腿骨では、重度のMg欠乏食投与とは異なる変化が引き起こされていることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
今年度中に物理的解析を終わらせ、DNAマイクロアレイのデータ取得まで行う予定であったが、骨密度のデータ解析に少し時間がかかってしまった。骨強度の測定についても、コロナのオミクロン株の感染拡大により、一時的に他大学に測定に行くことが難しくなってしまい、まだ実施できていない。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度の骨代謝マーカーやミネラル代謝関連ホルモン同様に、骨密度においても大きな変化は見られなかったが、Mg欠乏が軽度であっても影響はある点、また重度のMg欠乏食投与とは異なる変化がみられている点についてはとても興味深い。骨密度への影響が小さかったことから、骨強度への影響も小さいことが推察されるが、引き続き物理的解析を行う。また網羅的遺伝子発現解析においては、生化学的解析や物理的解析よりも軽度のMg欠乏による影響を捉えることができると推察されるので、引き続き解析を進めたい。
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Causes of Carryover |
DNAマイクロアレイ解析に用いる大腿骨からのtotal RNAの抽出方法について検討試験を開始し、使用する(購入する)消耗品の選定を行う予定であったが、検討試験の途中で機器が壊れてしまったため、検討が進まず、今年度中に消耗品の購入にまで至らなかった。またDNAマイクロアレイ解析が進んでいないので、使用する試薬の一部購入費用が来年度への持ち越しとなっている。
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