2020 Fiscal Year Research-status Report
ポリフェノールの焙煎化学―フェノール酸の高温反応生成物の化学的特徴と機能―
Project/Area Number |
20K02368
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
増田 俊哉 大阪市立大学, 大学院生活科学研究科, 教授 (10219339)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 焙煎反応 / フェノール酸 / 高温加熱 / ポリフェノール / フェルラ酸 |
Outline of Annual Research Achievements |
食材の調理・加工操作の中でも,加熱は最も基本的なものであり,本研究では,最も高温を用いる焙煎法に着目している。焙煎は穀類などの食材を200℃近い高温で加熱する方法で香ばしい匂いや色を発生させる。高い食品機能性を有するポリフェノールも,この温度では安定ではない。そこで,数ある機能性ポリフェノールの中から,穀類に多く存在するフェノール酸を取り上げ,これらの反応の生成物の化学的なキャラクタリゼーションから,初年度の研究を開始した。穀類フェノール酸には,カフェ酸,フェルラ酸やシナピン酸などが知られている。まず,カフェ酸とフェルラ酸に着目し,その反応性と反応生成物に違いがあるかを検討した。フェルラ酸及びカフェ酸を焙煎のモデル条件として,水溶液にするとpH6に相当するリン酸塩混合物に担持し, 130から300℃まで高温加熱反応を行った。その反応生成物をメタノールで抽出し,反応生成物をグラジエントモードを用いたPDA検出逆相HPLC法にて,全成分を分析し,比較した。その結果,カフェ酸の焙煎反応物には,温度依存性が見られたが,フェルラ酸の焙煎反応物には依存性が見られなかった。なお,これまでの研究により,カフェ酸の高温反応物は,フェニルインダン骨格を有することが報告されている。今年度の研究により,カフェ酸の各フェニルインダン物質の生成の温度による違いがあり,また,フェルラ酸については,フェニルインダン化合物とは異なる生成物ができている可能性が示唆された。 焙煎反応により生じた機能として,キサンチンオキシダーゼ阻害能を測定した。キサンチンオキシダーゼは,核酸代謝の最終酵素で,通風の原因となる尿酸を生成する酵素であるとともに,活性酸素も産生することから,酸化ストレスの原因酵素でもある。検討の結果,焙煎反応物(混合物)は,原料以上のキサンチンオキシダーゼ阻害活性を持つことが判明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
コロナ感染症拡大のため,研究開始が遅れ,焙煎反応物の抗酸化的機能検証が,今のところXOIのみにとどまった。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度の中心的研究事項ならびに今年度実行し得なかった部分として, 1)フェルラ酸の焙煎反応生成物の化学構造の決定と温度依存性のあるカフェ酸からの焙煎反応生成物の同定。焙煎反応温度を反映した反応生成物を精製単離し,機器分析法を用いて,化学構造を決定する。その化学構造から,温度に依存する反応機構を解明する。 2)シナピン酸の焙煎反応生成物の特殊性の探索。第3のフェノール酸として,シナピン酸を用いて焙煎反応を行い,カフェ酸,フェルラ酸との違いを検出する。 3)焙煎反応生成物に特徴的な食品機能のさらなる探索。反応生成物の化学的,生化学的機能を検証する。 以上の達成を目的に,本研究を遂行する。
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Causes of Carryover |
本研究に必要な設備は購入設置したが,試薬等消耗品はこれまでの研究室保管品で十分であった。旅費,人件費等は,コロナ感染症による研究制限により,執行することがなかったため。
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Research Products
(1 results)