2021 Fiscal Year Research-status Report
Study on utilization method of vacant buildings in residential area by precautionary approach
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20K02395
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Research Institution | Kyoritsu Women's University |
Principal Investigator |
高橋 大輔 共立女子大学, 家政学部, 教授 (50321394)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 空きストック / 居場所 / 地域コミュニティ / ソーシャルインクルージョン / 住宅地 / 徒歩圏 / 空き家 / 予防 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度まではコロナウィルスの影響が大きく、研究が思うように遂行できなかったが、一昨年度、昨年度は地域住民に対する啓発活動を行いながら、下地づくりを入念に行ってきた。その成果もあり、昨年度末には地域住民の協力もあり、地域住民の居場所となる空き家の改修・運用が始まり、最終年度にて本研究の到達目標を達成できそうである。実績としては以下の通りである。 1)東京都、調布市の協力により、地域住民だけでなくこれから住宅地の空き家を活用して、居場所形成や小商いなど地域のプラットフォームづくりの手法について4名の専門家から話をうかがうことが出来、これらの対談の様子をZoomで配信し、回を重ねる毎に聴講者の数が着実に増えた。 2)それらの居場所を形成する際に、限られた資金の中で建物の改修などを行う必要があるが、そのノウハウについて断熱改修など環境という観点からの知見を教授してもらうべく、2名の専門家に実際の建築空間を見せてもらうと共に、図面提供やヒアリングを行った。 3)これまでの空き家実態調査から地域の居場所として活用できそうな空き家を抽出し、調布市の協力を得て、空き家オーナーにコンタクトを取った結果、調布市富士見町において、地域貢献の場として活用するのであれば、固定資産税程度のの賃料で一軒家を貸していただけるという物件が出たため、地域住民が賃貸契約を結び、2022年6月より地域の居場所として運用開始予定である。 現在は活用のための安全対策の改修工事(電気、空調)を行い、運用開始に向け、利用者と運用ルールなどの調整を行っている段階である。 最終年度は空き家の予防、空き家利活用を促進するための環境を整えるため、空き家情報や活用ための共有手法などの整備、地方都市における空き家利活用のための人的資源の育成方法に関する知見の蓄積を行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
2020年度はコロナ禍によって予期しない事態がいくつか生じ、研究スケジュールの軌道修正をしつつ、2021年度もコロナ禍によって年度開始当初は思うように動くことが難しい状況であったが、年度半ばから行政の支援によって、研究が大きく進展することとなった。 まず調布市の住宅地に地域で利活用できる空き家が見つかったことが大きい。 Zoomを用いたオンラインシンポジウムなどで居場所形成や小商いなど地域のプラットフォームづくりの手法などに関する地域住民に対する啓発活動を行いながら、ソフト面に関して地道に知見を蓄積することが出来た。また空き家の改修などに関する知見を得るため、断熱改修など空き家における重要なポイントについて建築家へのヒアリングを行った。 調布市の協力により、今年度から利用することが出来るようになった空き家の活用方法について、地域住民や行政、社会福祉協議会のメンバーと十分に議論した結果、近隣住民が地域活動として自由に利用可能なスペース以外の2つのスペース(部屋)を、地域のスタートアップビジネスの場として、コンペ形式で募り、子どもに対してアート教育を伝えるグループと、SDGsという観点からプラスティックリサイクルの過程を視覚的に見せるテックビジネスのグループの2つが利用することになった。 近隣には小学校や学童保育施設、児童養護施設があり、その子どもたちの世話をしている地域住民がいるため、彼らが「自由に利用可能なスペース」を使えるよう、現在スペースの運用方法を調整中である。 またその空き家の前庭を地域住民によるフリーマーケットなどで活用することが決まっており、建物全体を利活用することによって、空き家が負の遺産ではなく、地域にとって資産になることを広めることが出来るのではないかと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
これら一連の方法が、予防という観点からの住宅地における空きストックの利活用方法の標準形とは言い難いが、あるひとつの手法を見いだしたことは確かである。本研究で行っている研究対象は大都市圏の住宅地における空き家の利活用方法であるが、他の研究プロジェクトで動き始めた地方都市、特に中山間地域における地元に若い世代をつなぎ止める場としての空き家の活用手法に展開できるようなすすめ方が出来ればと考えている。そのためには、この研究課題において、空き家を地域住民が使っていくためのルール作り、改修工事や家賃、光熱水費などの予算の捻出方法や使用者の負担、特に問題となっているのが空き家利活用においてはWi-Fiが必須であり、それらの設置をどのように解決するか、地域によってその解決手法が異なってくるため、それらを整理すること、違う地域においても展開できることが本研究の着地点であり、そのための実証実験とルール作り、問題点の洗い出しなどを今年度前半に行い、後半はそれらの成果をまとめる予定である。
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Causes of Carryover |
年度前半はコロナ禍により、当初の研究スケジュールが思うように進まなかったことが原因のひとつであるが、後半から急速に進展が見られたため、次年度においてデータの収集及び分析、図面作成などを行う予定である。短期間で図面作成やデータ処理を行う関係上、そのための機器購入として使用すること、またデータ分析のサポートとして学生アルバイトを雇用すること、この研究課題の汎用性を確立していくため、地方における空き家利活用と地域人材の育成方法の知見の収集、建築分野だけでなく、他分野の専門家へのヒアリングなどを行う予定である。
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Remarks |
東京都と調布市と共に行っている事業報告書を一昨年度、昨年度と制作している。
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Research Products
(1 results)