2020 Fiscal Year Research-status Report
コロイド食品としての野菜のテクスチャーへの加熱調味の影響と新調理システムへの展開
Project/Area Number |
20K02408
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Research Institution | Prefectural University of Hiroshima |
Principal Investigator |
杉山 寿美 県立広島大学, 地域創生学部, 教授 (10300419)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 野菜 / 加熱 / 体積 / テクスチャー |
Outline of Annual Research Achievements |
加熱野菜は固体に液体が分散したコロイド食品であり,そのおいしさは出来上がり後も変化すると考えられる。しかし,その構造に着目した加熱,保存,再加熱過程での変化や,調味料の影響に関する研究はなされていない。本研究では,加熱調味,保存,再加熱が,加熱野菜のおいしさにどのように影響しているのかを明らかとし,クックチルシステム等でもおいしさを維持できるよう,加熱野菜の保存,再加熱時の体積,水分量,テクスチャーへの影響を次のように検討した。 2.5cm角の大根,人参,じゃがいも,茄子を沸騰させた蒸留水あるいは調味液(砂糖5%,塩2%)で30分間加熱した。その後,加熱溶液中で一晩保存し,再加熱を行った。重量,体積は試料1個ずつ測定した。水分量は試料3個ずつをホモゲナイズして水分計で測定し,内部(2㎝角)のみの測定も行った。破断測定はくさび型プランジャーで繊維に直角に15mm(茄子は12mm)の圧縮を行った。また,試料内部と外部のNa量の測定も行った。 その結果,重量および水分量は,大根,人参では水加熱,調味液加熱のいずれでも減少し,保存で増加,再加熱で再び減少した。体積は,加熱,再加熱では重量,水分量と同様に減少したが,保存では増加しなかった。じゃがいもでは加熱時の重量減少が生じず,体積減少も少なかった。茄子では水加熱で重量,水分量がほぼ変化せず,調味液加熱で減少した。破断応力は,調味液加熱での保存,再加熱による低下が,大根で特に著しかった。Na量は,いずれの野菜でも外部では経時的に,内部では保存時に増加した。 これらのことから,野菜重量は加熱時には野菜の水分溶出によって減少する一方,保存時には溶液の流入で増加すること,保存時の重量増加と体積増加は必ずしも一致しないこと,調味液加熱で保存時の破断応力の低下が著しいことが示され,破断応力低下への野菜内部のNa量増加の影響が推察された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究は,加熱野菜のおいしさに加熱調味および保存がどのように影響しているのかを明らかとすることを目的としている。令和2年度は重量,水分量,体積,テクスチャーへの影響をを検討し,「研究実績の概要」に記したような結果を得ているが,コロナ感染症対策として研究実施に関して制限が生じたため,実験条件や実験数が限られたものとなっている。
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Strategy for Future Research Activity |
令和3年度は当初の予定通り,真空調理に関する研究を行うとともに,令和2年度に得られた結果を補足する。また、論文発表の準備を進める。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由は,コロナ感染症対策として研究実施に制限が生じ、試薬等の消耗品の購入が少なく,また研究協力者である学生への謝礼の支払いがなかったためである。令和3年度の使用計画は,当初の予定通り,学生に研究補助を依頼し,精力的に研究を進め,繰越金も含めて試薬等の消耗品,謝金として使用する。
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