2021 Fiscal Year Research-status Report
コロイド食品としての野菜のテクスチャーへの加熱調味の影響と新調理システムへの展開
Project/Area Number |
20K02408
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Research Institution | Prefectural University of Hiroshima |
Principal Investigator |
杉山 寿美 県立広島大学, 地域創生学部, 教授 (10300419)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 野菜 / 加熱 / 保存 / 体積 / テクスチャー / ペクチン |
Outline of Annual Research Achievements |
加熱野菜は固体に液体が分散したコロイド食品であり,そのおいしさは加熱調理後も変化する。しかし,その構造に着目した加熱,保存,再加熱過程での変化や調味料の影響に関する研究はなされていない。本研究では,加熱野菜のおいしさに加熱,保存,再加熱がどのように影響しているのか,クックチルシステムでもおいしさは維持できるのかを検討している。令和2年度は,砂糖5%,塩2%の調味液で数種類の野菜を加熱し,加熱,保存時の調味料の浸透の程度,重量,体積,水分,テクスチャー変化を検討した。結果,加熱により野菜中の水分が溶出し,保存時に加熱溶液が流入,この水分増加に伴う重量増加と体積変化は一致せず,大根では保存時の調味液の内部への浸透により破断応力の低下が著しいことを明らかとした。 令和3年度は,令和2年度と同条件で加熱野菜のペクチンの構造変化・溶出量を検討するとともに,より低濃度(砂糖2.5%,塩1%)の調味液での加熱,保存時の調味料の浸透の程度,重量,体積,テクスチャー変化を検討した。さらに,異なる保存条件や真空調理の影響も検討した。 その結果,ペクチンの構造変化・溶出量については,大根では調味液加熱において水加熱よりも煮汁中のペクチン量が有意ではないものの多いことが示された。低濃度の調味液での加熱,保存時の重量,体積,テクスチャー変化は,高濃度の調味液加熱,保存時と同様であるものの,その変化は小さく,これは保存時に流入するNaが少ないために Caとの交換が起きにくかったためと考えられた。また,加熱後,溶液から取り出して冷却保存すると,溶液中での保存よりも,再加熱時のテクスチャー変化が抑制された。これらから,低濃度の調味液で加熱し,煮汁から取り出して冷却保存することで,クックチルシステムにおける嗜好性低下を抑制できることが示唆された。真空調理の結果については令和4年度の研究後に報告する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は,加熱野菜のおいしさに加熱調味および保存がどのように影響しているのかを明らかとすることを目的としている。令和3年度は重量,水分量,体積,テクスチャーへに,浸透するNaや糖の影響,さらにペクチンの構造変化・溶出量を把握した。コロナ感染症対策として研究実施に制限が生じているが,おおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
令和4年度は当初の予定通り,真空調理に関する研究をすすめるとともに,令和2,3年度に得られた結果を補足する。また、論文発表の準備を進める。
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Causes of Carryover |
令和3年度はおおむね順調に研究をすすめることができたが,令和2年度の研究活動の遅れ(コロナ感染症対策としての制限による)のすべてを補うことはできなかった。令和4年度は,より精力的に研究を進め,繰越金も含めて試薬等の消耗品,謝金として使用する予定である。
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