2021 Fiscal Year Research-status Report
Formation process of teacher's license for school health education
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20K02425
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
七木田 文彦 埼玉大学, 教育学部, 准教授 (40431697)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 保健授業改革 / 独立教科 / 免許状 |
Outline of Annual Research Achievements |
「保健」の独立教科免許状の誕生後、実態としてどのような状況をもたらして今日に至っているのか、今日的課題を教室の中の出来事に求め、体育科との合科型教科の方向性として独立教科の可能性を検討した。制度的ロックインの中における改革は、個々の授業、個々の具体的な学びの中に求めるしかなく、その例として著作『保健授業の挑戦-学びの創造とデザイン-』の中にその可能性を記載した。また、日本学校保健学会誌「学校保健研究」に「日本における保健教育の歴史から現代をどう見るのか」を投稿し、独立教科の成立過程の課題について論じた。 そこでは、「保健科」は教育課程の標準装備と考える必然性について、教科は、時代における公教育、教科体系のあり方は常に変化することを必然として改革のヴィジョンを示すことが必要で、改革のあり方として二案を示した。 第一に、1930年代に展開された健康教育運動、第二に、戦後教育改革における「中等学校保健計画実施要領(試案)」、第三に、1990年代以降のヘルスプロモーションの発想である。そのいずれの展開も、民主的で創造的実践を生み出すことができる考え方によって支えられている。 近年の健康教育は、新自由主義的な政策と親和性をもち、個人の責任を基本原理とする行動主義に立脚している。この健康教育は、環境に適応する強い自己の形成をめざして困難な社会を乗り切ろうとする。これに対し、ヘルスプロモーションの「参加」の概念は、バンコク憲章に示されているように、「コミュニティに権限を与えること」、「パートナーシップ」、「健康の平等性を改善するための政策と協力」といった考えに注目する。ここに、バラバラに解体されつつある個とコミュニティを「参加」と「対話」によって再構成する。「ケア」を中心にした「つながりの健康教育」は、21世紀型の教育として新たに学びをデザインできる可能性をもっている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
コロナ禍での史料収集に制限がありながらも、次年度進める予定であった領域の研究を進めながら進行の調整を行っており、概ね順調に進められている。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度は、学術研究誌に論文を投稿する予定である。特に「保健」の独立教科誕生目前で「保健」と「体育」の合科型教科「保健体育科」誕生の判断の中心にいた学校体育研究委員会主査であった岩原拓の個人思想史、そして自らの判断によって段階的に「保健」を独立教科とすることへ舵を切るまでの制度的、政治的、行政的判断の経緯について叙述し、論文を発表する予定である。また、同時に現状の改革論として教室における「保健」授業に実態についても調査予定である。
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Research Products
(3 results)