2022 Fiscal Year Research-status Report
批判的談話研究と民主的シティズンシップ教育の融合をめざす実践的研究
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20K02431
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
名嶋 義直 琉球大学, グローバル教育支援機構, 教授 (60359552)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 批判的談話研究 / 民主的シティズンシップ / 教材 / 新聞記事 / 沖縄地方紙 / 批判的リテラシー |
Outline of Annual Research Achievements |
2022年度の研究実施計画は「批判的談話研究(CDS)の成果を組み込んだ民主的シティズンシップ教育(EDC)教材」の出版であった。2020年度から続く新型コロナウイルス感染症の流行拡大により研究活動の停滞を余儀なくされたこともあって計画していたドイツ学校教育機関の視察はかなわないままであるが、それまでの研究・教育実践の蓄積を活用し教材作成に取り組んだ。現在、予定より遅れているが、初校が終わり二校にむけて出版社が編集作業を行なっており、着実に進展している。その一方で教材の完成を待たずに、さまざまな機会や媒体を活用して、民主的シティズンシップの社会的実装を目指し実践的融合研究とその研究成果の発信を行った。具体的な実績としては、2冊の書籍の中で、批判的談話研究・民主的シティズンシップ教育をテーマとする論考を公刊した。日本語学が専門の学術商業雑誌『日本語学』にも論文が掲載された。オンラインであるが台湾の大学や在エジプト国際交流基金日本文化センター主催の国際シンポジウムでそれぞれ口頭発表を行った。『α SYNODOS』というオンラインマガジンにも批判的談話研究の論考を公開した。その他にも多文化共生に取り組むNPO団体や日本語教育の専門学校、地域の国際交流協会が主催する一般市民向け講座やワークショップ、中国山陽地方の公立大学大学主催の公開シンポジウム、日本シティズンシップ教育学会主催のシンポジウムなどにも依頼を受けて積極的に登壇した。これらの累計回数は10回にのぼり、開催された国や地域も多様である。以上から、一定のレベルで民主的シティズンシップの社会的実装を目指した実践的融合研究とその研究成果の発信ができたと考える。なお、以上と並行して、2022年度も新聞(全国紙、沖縄地方紙)のデータ収集とそれに関連する言語景観調査を継続して行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
2020年度から2022年度と世界規模で新型コロナウイルス感染拡大が続き、当初の計画にあった海外での活動は大きく制限を受け全く実施できなかった。そこで2022年度はそれまでの研究・教育実践のリソースを最大限に活用し教材作成を中心に進めたが、執筆者も出版社も社会状況ゆえに行動変容を迫られた面があり、結果として残念ながら出版が遅れている。研究開始初年度から継続している全国紙と沖縄地方紙の新聞記事の収集は、新型コロナ感染拡大下であってもデータ収集を継続することができていて、断片的・部分的なデータを活用して研究を進め、論文を公表したり口頭発表を行ったりした。それだけではなく、多くの講演・ワークショップ等講師の機会を活用して、研究の世界の外に「民主的シティズンシップ教育の有益性」を発信することができた。それらの研究成果の中には全国紙と沖縄地方紙の比較を批判的談話研究の姿勢で行ったものもあり、本補助事業の目的も一定程度達成している。ただし時間的な問題もあり、収集した大量のデータを体系的に整理し十分に活用して批判的談話研究や民主的シティズンシップ教育の新機軸を打ち出すまでには至っていない。出版計画の遅れは事実であり、一般社会への研究成果の還元や教育実践など、個別的には成果をあげている実績もあるが、達成できていない目標もある。以上のこと踏まえ、2023年度が事業最終年度であることを考えると、総合的には「遅れている」または「多少、遅れている」と判断せざるを得ない。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度も新聞(全国紙、沖縄地方紙)からの基礎的なデータ収集とそれに関連する言語景観調査を継続して行い、個人としての研究とその成果を活用した民主的シティズンシップ教育を展開したい。世界的な感染症の流行は収束状況にあるため、ドイツの現地協力者と連絡を取りながら、今年度内教育機関視察の実現に向けて取り組み、次年度以降の研究・教育活動につなげたい。すでに出版プロセスに入っている民主的シティズンシップ教育の教材については、2023年度中の可能なかぎり早い段階での刊行を目指す。それ以外にも、次年度もさまざまな領域で講演やワークショップなどを開催し、書籍刊行や論文公刊などでは訴求できない社会層に向けて、民主的シティズンシップ教育を広める活動を行なっていきたい。批判的談話研究に関しては、他大学の研究者や外国の研究者と連携しながら研究の認知度向上、次世代研者の育成、ネットワークの形成などに取り組む予定である。これらの実践を通して、民主的シティズンシップの社会的実装を目指した実践的融合研究とその研究成果の発信を行っていく予定である。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの世界規模での感染拡大のため、当初計画していたドイツへの渡航や、対面での学会での研究成果の発信や市民・地域への還元活動が、実現できなかったり実施機会・参加回数が減少したりしたため。2023年度中に渡航して調査や資料収集を行ったり、対面で参加できる研究・教育実践の機会に参加することが可能な環境となれば、計画を実施し予算を執行する予定である。また教材出版時に出版費用の支弁が必要となる場合もありうる。その際にもこれまでの未使用残額から支出を検討する。
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