2023 Fiscal Year Research-status Report
A Study on the Formation and Transformation Process of Dowa-Education Thought in Pos-twar Japan
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20K02433
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Research Institution | Meio University |
Principal Investigator |
板山 勝樹 名桜大学, 国際学部, 教授 (80643535)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 同和教育思想 / 解放教育思想 |
Outline of Annual Research Achievements |
第一点目に、同和対策審議会答申提出後に、福岡県・福岡市、大阪府・大阪市において策定された同和教育基本方針が示した中心課題と同和教育像を分析・考察し、その課題を明らかにした。同和教育基本方針が示した同和教育像は、一つに、「解放の主体」形成の後景化を強化する危険性を内包していた。二つに、実践の焦点を二分化した進路・学力保障実践と人権・部落問題学習として示し、その二つの相互移行過程や二つの統合等が説明されていないために、それぞれ独立した実践として認識される危険性を内包していた。 第二点目に、1970年代の解放教育の理論的リーダーの一人であった木下繁弥が展開した「解放の学力」論を分析・考察し、彼の議論による思想的な進展と内包した課題を明らかにした。木下論の課題の第一点目は、主体的側面=「立場」と規定し、「意欲」と相補的にとらえる単純さ、第二点目は、既存の学力との「文化的差異」を有する「科学的・芸術的認識」の具体像、全体像の不明確さ、第三点目は、教育目標論が示す構成要素間の関連構造および、構成要素と教育方法論等の間の相互関係の未整理であった。 第三点目に、1970~80年代に、『解放教育』誌、『現代教育科学』誌等に掲載された、各年度の同和教育・解放教育実践・運動を総括する論稿の分析・考察を整理し、「同和教育から人権教育への再構築」言説が関係者に受容される前提(外部環境と内部過程)を明らかにした。同和教育政策、行政の後退、自主的・民主的同和教育論者との相克を遠因とし,解放教育の「広がり」に伴う形骸化言説の流布、部落の人々の行政依存の進行と「第三期の部落解放運動」の提唱等による解放教育内部での対自的反省を求める趨勢が,「再構築」言説が受容されていく直接的な契機が現れた重要な前提であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
コロナ禍がある程度落ち着き、聞き取り調査や学会参加、現地に出向いての資料収取等を再開したものの、一昨年度までのコロナ禍の影響があり、全体として研究の進行が遅れている。特に、聞き取り調査データ収集が、圧倒的に遅れている。 現状を踏まえ本年度は、積極的に聞き取りデータ収集に臨みたい。
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Strategy for Future Research Activity |
第一点目に、1970年代中盤以降、自主的・民主的同和教育論者(日本共産党支持者)と解放教育論者(部落解放同盟支持者)が対立していく背景、また、その争点を明らかにする。第二点目に、1970年代以降、全国同和教育研究協議会に集う実践者に一定程度の影響を与えた「四認識」論を、「文化的差異を有する科学的・芸術的認識の形成」という視角から分析・考察し、その到達点と課題を明らかにする。第三点目に、「文化的差異」という視点からの解放教育論を提唱した小沢有作の議論を分析・考察することを通して、その意味と意義を明らかにする。
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Causes of Carryover |
昨年度後半期には、学会参加、聞き取り調査、現地に出向いての資料収集等を実施できたが、前半期はコロナ禍を警戒し、十分に実施できなかった。本年度は、学会参加、聞き取り調査、現地に出向いての資料収集等を積極的に実施していきたい。
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