2021 Fiscal Year Research-status Report
琉球政府期の沖縄におけることばの教育に関する基礎的研究
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20K02449
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
近藤 健一郎 北海道大学, 教育学研究院, 教授 (80291582)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 教育指導委員 / 琉球政府文教局 / 沖縄教職員会 / 日本語教育 / 国語教育 / 教育研究団体 / 沖縄国語教育研究会 / 現代沖縄 |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度には、前年度に行なった教育指導委員を介した日本本土の教育課程や教育実践の沖縄への指導について論文として発表することができた。その論文の成果は以下のように整理できる。 ①1959年に初めて派遣された教育指導委員は、沖縄の教員への指導過程において、地区ごとの教科教育に関する教育研究団体の結成を主導したことを明らかにした。1959年以前にも教育研究団体が結成されていたことに留意するとき、次のことがとくに重要である。教育指導委員の来沖前に結成されていた団体は、学校教員に閉じずに専門家や地域住民をも含んで教育研究を行なっていた。それに対し、教育指導委員が主導して結成した団体は、学校教員にほぼ限定され、教科の必要性に特化した教育研究を行なう地区ごとの団体であったことを明らかにできた。 ②そのように地区内を対象として組織された団体を、琉球政府文教局は統合して沖縄全域の教育研究団体へと再編していくことを企図した。国語科の場合、教育指導委員でもあった文部省の倉澤栄吉が深く関与して、沖縄国語教育研究会という沖縄全域的な教科ごとの教育研究団体を結成した。このような沖縄全域の組織を結成し、年に一回の定期的な研究大会を開催していく過程で、日本本土の実践者や研究者から指導を継続的に受けるようになるとともに、本土の教育研究団体とも研究交流を行なうようになっていった。 教育研究団体の組織化過程において、沖縄教職員会も当時の学力向上という課題に応えていくためにも、自らが研究しようとする際の組織として結成を推進していたことも重要である。この論文発表に際して、同誌に「論評」を寄せて下さった桜澤誠氏が指摘しているように、琉球政府文教局と沖縄教職員会の関係性の分析は、きわめて重要な論点として残されている。沖縄教職員会の史料調査、分析については、中途であり、2022年度以降の課題として位置づけていきたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「研究成果の概要」に記したような論文を発表できたこと、さらに次なる課題へと着手すべき点も見出していることから。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度以降の研究においては、今年度の研究で注目した沖縄国語教育研究会に注目して調査研究を進めていく。具体的には、同会の機関誌『国語沖縄』に止まらず、同会にかかわった教育指導委員である倉澤栄吉など、また同会の中心メンバーである上里昌栄などの著作ならびに活動の調査研究である。その際、沖縄教職員会の教育研究集会での研究成果等と照らし合わせ、その差異に注目して分析を進める。沖縄教職員会の史料調査は、このコロナ禍で自粛せざるを得なかったので、2022年度以降、可能な限り迅速に再開していく。 なお、コロナ禍での開館状況、移動自粛要請に留意して調査を進めていく。
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Causes of Carryover |
主要な要因は、2020~2021年度中のコロナ禍での史料調査出張および学会・研究会参加が大幅に減少したことによる。2022年度には、コロナ禍の感染拡大状況を考慮しながら可能な限り出張等を実施するとともに、史料整理補助の人件費や書籍購入などを予定通り執行していきたい。
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