2020 Fiscal Year Research-status Report
Politics of Sovereign Education in the Context o High School/University Articulation Reforms
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20K02452
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
小玉 重夫 東京大学, 大学院教育学研究科(教育学部), 教授 (40296760)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田中 智輝 山口大学, 教育学部, 講師 (60780046)
村松 灯 帝京大学, リベラルアーツセンター, 講師 (70803279)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | シティズンシップ教育 / 高大接続改革 / 教育政治学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、高大接続改革の理論と実践を主権者教育の視点から検討することを通じて、近年の改革においてどのような思想的文脈のもとで知の体制のいかなる変容が生じているのかを教育思想研究,教育政治学研究の視点から明らかにすることで、高大接続の構造転換に向けた理論的視座を示すことである。 1年目にあたる本年度では、高大接続改革にともなう知の構造転換と若者の政治的主体化との接合可能性を理論と実践の両面から検討した。検討にあたっては、ジャック・ランシエールを主な手がかりとしつつ、 探究学習の実践的動向に着目し、それがどのような点で知の構造転換の契機を含んでいるのかを明らかにした。こうした研究の成果は、「若者の政治参加と高大接続改革」としてまとめ日本政治学会において報告した。特に、教育政治学的に見たときの課題として重要なのは、第一に、探究的学習が受験というメリトクラシーの社会的有用性に絡め取られ、第二に、そのための技術知、方法知へと類型化され、そして第三に、高校の「特色」が既存の階層構造の中に固定化され、探究学習もまた、このように固定化された特色に応じて階層化されているという点が確認された。 このような探究の階層構造がもたらす「政治」を組みかえていくためには、教育の出口である「結果」を重視する、つまり学習成果を数値化して評価することで人材選別を行う中央集権的なツリー型の教育の構造から、リゾームとしての教育、「中間地点」にとどまる、つまり出口のない、答えのない問いと向き合う子どもたちの探究活動をベースにした、ローカルでより分権的なリゾーム型の知の論理へと転換していくことにより、「政治的なるもの」を可視化していくが必要になることが明らかにされた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、当初の計画に従って、高大接続改革をめぐる理論と実践を整理するための解釈枠組みを形成することに着手した。こうした課題については「知の構造転換」と「若者の政治的主体化」との関わりを考察の中心とすることによって、理論と実践の両面から解釈枠組みを洗練することができた。なお、当初は海外の研究者との交流を進める予定であったが、コロナウイルス感染症流行によって、その一部を次年度以降に延期することとしたが、国内の実践的動向について検討を優先することによって研究を進展させることができている。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度につづき、高大接続改革にとも なう実践的試みについての調査研究をすすめることを予定している。それと並行して、高校と大学の双方向的な知のやりとりに主眼をおいた理論構築を進めていきたい。
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Causes of Carryover |
当該年度に予定していた海外研究者との交流を見送り、次年度にヒヤリングや国際シンポの開催を行うことを計画しているため、そのための資金を次年度使用額として確保した。
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