2020 Fiscal Year Research-status Report
日本の戦後初期授業実践における「表現の指導」に関する基礎的研究
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20K02453
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Research Institution | Ochanomizu University |
Principal Investigator |
冨士原 紀絵 お茶の水女子大学, 基幹研究院, 准教授 (10323130)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
豊田 ひさき 朝日大学, その他部局等, 教授 (70079127)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 戦後教育実践史 / 表現活動の指導 / 作文教育 / 生活作文 / 教科作文 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は戦前から1950・60年代を中心とした学校での学習指導上における表現活動に注目し、教師の指導理念や指導の実際と、子どもの学習成果を照らし合わせることで、子どもを主体とするアクティブラーニングの学習指導の方法論を解明することを目的としている。 本年度は教師の指導理念や指導の実際を示す文献史料の収集を中心に基礎的な条件整備を中心に研究活動を進めた。 既に多くの先行研究、とりわけ当該時期の生活綴方教育における教師の表現に関わる指導理念や子どもの表現活動の表出物である綴方作文の分析はなされているものの、それらは子ども自身の生活そのものを対象とした、学校での学習の中心となる教科や領域を問わない内容の表出物の分析が中心である。 それに対し、本研究は子どもの生活のみならず、主として学校での教科学習における表現活動に関わる成果物を分析対象とすることに独自性がある。このため、史料収集においても、いわゆる生活綴方教育の作文をのみ対象とするのではなく、戦前と戦後の表現の指導に関わる多様な実践記録類を収集することにし、その分析を進めることとした。具体的には、戦前の教育実践の表現に関わる実践の再解釈と、戦後の教育雑誌等の収集と分析である。 本研究では当時の学習者にも直接会い、表現活動に関する学習成果の保管状況を調べたり、当事者にインタビューを行うことを想定していたが、対象者は一様に高齢であり、また訪問調査対象地域としていた場所も研究者の在住する地域から離れていたため、コロナ禍により現地調査を進めることが不可能であった。今年度は史料文献収集に専念せざるを得ず、表現活動の指導に関する教師側の成果や課題を洗い出すことに注力した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本研究では宮城県、秋田県、兵庫県を研究対象地域とし、1950年~60年代に小・中学生だった方にインタビュー調査を実施し、学校や地域の公共図書館で史料収集することを想定していた。 しかし、コロナ禍により、高齢者の方達に面会しインタビューを実施することが不可能となったこと、さらに研究代表者と研究分担者の居住している地域がそれぞれ東京都心部と愛知県名古屋市であり、通年を通して県をまたいだ移動の自粛が要請されたことで調査対象地への移動が不可能であったこと、また、小・中学校に史料収集に行くことも想定していたが、部外者の入校は厳しく制限された。これらの理由により、インタビュー調査と史料収集に困難を来した。
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Strategy for Future Research Activity |
コロナ禍の収束が見えない現在、1950年~60年代当時に学習者だった高齢者へのインタビュー調査は研究終了予定年度までには不可能と考えている。コロナ禍の一先ずの収束を待って、先ずは研究対象地域の公共図書館や学校に保管されている史料類の収集を進めることとする。 公共図書館や学校に保管されている史料類、当時発行された教育関係雑誌類の中にも、未だ先行研究で注目されていない子どもの学習成果としての表現物が多数含まれることは,今年度の調査からも判明している。 よって、インタビュー調査に重点を置いた研究から、史料類を収集・分析・再解釈する研究へとシフトチェンジし研究を進めることとする。この方法でも、当初の研究目的は十分に遂げることが出来ると考えている。
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Causes of Carryover |
本年度インタビュー調査に関する旅費と謝金の支出を想定していたが、コロナ禍で不可能となったことにより予算の使途に変更を余儀なくされた。 次年度はインタビュー調査は不可能としても、対象地域の公共図書館や学校への史料収集は可能になると見込んでおり調査対象地域への旅費として計上する。また、研究の打ち合わせもオンラインで実施してきたが、今年度は対面で行う予定であり、その旅費としても活用する。
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