2020 Fiscal Year Research-status Report
Study of the drama education in the school education of Germany
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20K02458
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Research Institution | Niimi College |
Principal Investigator |
広瀬 綾子 新見公立大学, 健康科学部, 准教授(移行) (30814496)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 演劇教育 / シュタイナー教育 / 新教育 / 人間形成 / ドイツの学校教育 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、「ドイツの学校教育における演劇教育」について明らかにするものであり、その柱は主に、理論研究と実践研究から成る。初年度である今年度は、主に文献や資料を用い、理論研究を行った。 (1)ドイツの演劇教育の基礎研究となるイギリスにおける演劇的手法に関する研究を行った。ドイツの学校現場でも盛んに導入されている演劇教育の方法論すなわち「演劇的手法」について、イギリスにおけるドラマ教育を手がかりに明らかにした。具体的には、演劇的手法について、これまで取り上げられることのなかった道徳教育の観点から取り上げ、道徳性の育成にあたって、演劇的手法およびこれを用いたドラマ教育の実践がいかなる意義をもつのかを明らかにした。 (2)ドイツおよびオーストリアにおいて演劇を重視する私立学校、シュタイナー学校における演劇教育について明らかにした。これまで十分に明らかにされることのなかった道徳教育の方法として、演劇(クラス劇)が重要な役割を果たしていることを明らかにした。教師自身が演劇の素養を持つことの重要性を明らかにするとともに、演劇が子どもと教師の信頼と敬愛の関係の構築に力を発揮すること、そしてクラス劇がクラスという「共同体」のつながりを深める強力な力を持っていることを明らかにした。 (3)ドイツ語圏を代表する喜劇作家・J.ネストロイの作品である「クレーヴィンケル市の自由」の上演分析を行った。ネストロイの作品は、ドイツの学校演劇でも頻繁に取り上げられ、上演される作品である。本場ウィーンやドイツでの上演分析はかなわなかったが、ドイツ語圏の戯曲の上演に取り組む国内の劇団「清流劇場」による演劇上演をもとに、戯曲構造、演出、舞台装置、俳優の演技、音楽、身体表現、衣装、小道具など、あらゆる角度から分析を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ドイツの学校現場でも用いられている演劇教育の方法論すなわち「演劇的手法」について明らかにした。「演劇的手法」は日本をはじめ、世界各国で注目を集め、盛んに活用されている演劇教育の方法論であるが、その発祥であるイギリスでの演劇的手法を、ドラマ教育の実践とのかかわりで明らかにすることは、ドイツにおける演劇教育実践を明らかにする上での基礎研究と位置付けている。 ドイツにおける私立学校の一つであるシュタイナー学校の演劇教育については、2020年11月に行われたNPO法人京田辺シュタイナー学校12学年生による卒業演劇の上演分析を行い、この学校の青年期における演劇教育の意義について解明を進めている。ドイツの学校演劇にとどまらず、ドイツ・NRW州の児童青少年劇場であるヘリオス劇場等におけるドイツの乳幼児演劇に関しても、関連する研究会にて知見を深めた。また、ドイツの演劇教育ともかかわりの深い、秋浜悟史の演劇教育論に関する実践記録や資料、文献を収集し終え、現在読み込んでいる段階である。「アシテジ世界大会2020」(20th Assitej World Congress in Tokyo)における「国際子どもと舞台芸術・未来フェスティバル」(International Theatre Performing Arts Festival for Children and Young People)を通して、海外における青少年演劇の最新の動向についての把握・理解にも努めた。 コロナ禍のため、当初予定していたドイツへの渡航による研究調査を断念し、総じて、文献研究ならびに国内で可能なドイツ演劇およびドイツ演劇教育関連の研究会への参加や上演分析を通して、考察を深めている。
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Strategy for Future Research Activity |
コロナ禍のため、次年度も引き続き、ドイツの青少年劇場や学校での演劇教育研究調査は難しいと考えられる。文献や資料を通して、ドイツの青少年劇場や児童・青少年演劇専門劇団、学校などで行われている演劇教育実践の土台となる理論研究を進めたい。あわせて、国内で研究調査が可能なドイツ演劇教育関連の活動や学会、研究会への参加、ドイツ演劇上演の分析などを通して、研究を進めたい。
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Causes of Carryover |
(理由) 研究計画では、渡独し、10年に一度、ドイツ・オーバーアマガウ(Oberammergau)で上演される世界最大規模の「キリスト受難劇(Passions Spiele)」についての研究調査を行う予定であったが、コロナ禍のため不可能となり、その分の費用の剰余金が生じた。 (使用計画) 今年度の国内でのドイツ演劇上演、ドイツ演劇教育関連の活動や学会、研究会への参加や研究調査等のための諸経費にあてたいと考えている。
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