2021 Fiscal Year Research-status Report
Study on Maltreatment, Corporal Punishment and Parental Right of Correction
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20K02463
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Research Institution | Jissen Women's University |
Principal Investigator |
広井 多鶴子 実践女子大学, 人間社会学部, 教授 (90269308)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 親子関係 / 子どもの貧困対策 / 現物給付 / 現金給付 / 子どもの権利 / 児童家庭福祉 / 子ども家庭福祉 |
Outline of Annual Research Achievements |
親の体罰が否定されるようになる背景には、親子関係に対する捉え方の変化がある。今年度は、子どもの貧困対策を中心に、政策における親子観の変化について考察を行った。 2013年に「子どもの貧困対策推進法」が制定され、以後、少しずつ子どもの貧困率が減少してきた。だが、子どものいる家庭やひとり親世帯に対する社会保障給付=現金給付は増加していない。他方、「幼児保育・教育の無償化」や「高校授業料無償化」、「大学授業料無償化」などの教育支援=現物給付は大幅に拡充している。実際、2019年の大綱は、「子供に支援を届ける方法としては現物給付がより直接的」であると述べている。それは、今日の子どもの貧困対策が、国家と社会が社会保障によって子どもの生活と生存を保障する政策ではなく、国と地方公共団体が教育サービスという現物を子どもに直接提供することによって、子ども自身が「貧困の連鎖」を断ち切るようにするための政策だからである。 その背景には、「児童家庭福祉」から「子ども家庭福祉」へ、という児童福祉の理念の転換がある。1960年代に広がった「児童家庭福祉」という理念は、親と子を一体のものと見なし、親による教育こそが子どもの利益であり権利であるという認識を前提にして、社会保障によって親(母親)による保育や教育を保障しようとするものだった。それに対し、2016年に社会保障審議会児童部会が打ち出した新しい「子ども家庭福祉」は、もはや親と子の利益を一体のものとは見なさない。子どもは親から独立した権利主体であり、「生まれ育った環境」に左右されることのないよう、親から自立すべき存在なのである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
コロナ禍により、調査に出かけることが困難なことから、研究はかなり遅れている。この間行ってきたのは、主にインターネットを通じた文献や統計データの収集・分析にであり、雑誌等を所蔵している図書館で資料収集を行うことが十分できなかった。児童福祉施設などにも調査に行きたいと考えていたが、それもできなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は国際的な動向とそれが日本の法制度や政策に与えた影響について調べる。国連子どもの権利委員会が2010年に提出した日本に関する「審査最終見解」は、日本の民法および児童虐待防止法が「体罰への許容性について不明確である」と指摘していたが、2022年2月、法制審議会は、民法が規定する親の懲戒権を削除する民法改正要綱を法相に答申した。こうした経緯の中で、どのような議論が行われたのかを分析する。
また、親による体罰や懲戒に関する海外の法制度や取り組みに関して調査を行う。当初の計画では、2000年に子どもに対するあらゆる暴力を禁止したドイツを訪れ、虐待の防止と体罰禁止のための先駆的な取り組みについて調査する予定だったが、ウクライナ情勢の行方が分からないため、カナダに変更したいと考えている。カナダは「Nobody's Perfect」という親へのプログラムが有名であり、若い親や貧困家庭に対する支援が注目される。
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Causes of Carryover |
2020、2021年度と、新型コロナウィルスの感染拡大により、調査にでかけることが困難だったため、予定通り経費を使うことができなかった。今年度はカナダに調査に行くなど、できる限り調査を進めていきたい。
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Research Products
(2 results)