2020 Fiscal Year Research-status Report
教師のゲートキーピングと支援の研究-米・豪・蘭・西の社会科授業プロトコル分析-
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20K02473
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Research Institution | Minami Kyusyu University |
Principal Investigator |
酒井 喜八郎 (さかいきはちろう) 南九州大学, 人間発達学部, 講師 (20760937)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
久野 弘幸 名古屋大学, 教育発達科学研究科, 准教授 (30325302)
田中 伸 岐阜大学, 教育学部, 准教授 (70508465)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 社会科授業 / ゲートキーピング / プロトコル分析 / 支援 / シティズンシップ教育 / SDGs |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度は、コロナ禍のため、海外渡航による調査ができなかった。そのような中だが、今年度1年目の研究実績は次のとおりである。 研究代表者の酒井は、2018年9月にアメリカのシカゴ実験学校で収集したデータを活用してプロトコル分析を行い、話し合い授業での社会科教師の支援の方略についての論文を社会科関係の学会に投稿した。さらに6月28日の日本カリキュラム学会で「米・豪・西の社会科教師のゲートキーピング」について発表予定である。また、6月12日に「SDGsの視点から地理教育を考える」というテーマで名古屋地理学会で発表予定である。一方、研究分担者の田中は、後掲する「子どもの意欲を活用する社会科授業」に関する論文をThe Journal of Social Studies Education in Asiaに投稿し掲載された。また田中はRiitta Korhonen、 Tapio Heino and Mika Metsarinneと共著で、プロフェッサーのキャリア、アイデンティティ、教職経験の視点から、フィンランドと日本の比較調査を実施し、論文がJournal of Social Studies Lesson Studyに掲載された。さらに、田中は、辻本諭、三浦寛之と共著で、「教師・歴史学者・社会科教育学者が協働した授業のゲートキーピング- P4Cを用いた歴史教育実践:移民を考える」の紀要論文を『岐阜大学教育学部研究報告』に発表した。 また、研究代表者の酒井と、研究分担者の田中、久野と3人で、2020年5月26日と2021年3月4日にズーム会議を実施し、研究テーマについて随時、ディスカッションをしている。また、酒井は、2021年5月7日にアジェンダ21作成者のカナダ・ヨーク大学のチャールズホプキンス氏にSDGsとグローバルシティズンシップに関するインタビュー調査をズームにより実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2020年度(1年目)は、コロナ禍により渡航ができず予定していた海外調査はできていない。そこで、研究代表者の酒井は、2019年9月にアメリカのシカゴ実験学校で収集した社会科授業のデータを活用して時間をかけてプロトコル分析を行い、社会科教師の支援の方略について論文を社会科関係の学会に投稿した。また、次の6月12日に、SDGsの視点から地理教育を考える、というテーマで名古屋地理学会で発表予定である。さらに6月28日の日本カリキュラム学会で、米・豪・西の社会科教師のゲートキーピングについて、現時点での研究成果を発表予定である。 また、米・豪・蘭・西のそれぞれの国々のシティズンシップ教育関係者にメールで連絡を取り合うなどして、教育研究の交流をして、今後の研究の方向性を模索している。米・豪はコロナ禍の前の2019年に渡航した際に得たデータがあるので、これらを現在分析しているが、2020年度は、コロナ禍で渡航ができなかったため、今後は、コロナ禍の状況に対応しながら、臨機応変に、ズームやメールによる調査など、いろいろな方法を考えていきたい。一方、ゲートキーピングへのアプローチとして栗田佳代子氏(東京大)のティーチングポートフォリオの研修会に5月にズームで参加した。これは、教師のゲートキーピングを明らかにするうえでも有効な手立てとなるかもしれない。また、海外のシティズンシップ教育としての社会科授業において、わが国でも注目されているSDGsやグローバルシティズンシップの概念が重要と考え、5月にUNのアジェンダ21作成者のチャールズホプキンス氏とズームでの話し合いを実施した。 研究代表者酒井と研究分担者の田中、久野の3名は、2020年5月26日と2021年3月4日に3人で合同のズーム会議を2回行っている。分担者の久野からは、英語論文作成を勧められた。ズームを活用し3人で協力しながら進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度(2年目)も、コロナ禍が続き、海外研究に厳しい状況であるが、ズームによる会議やインタビュー調査、文献調査などを駆使して、米、豪、蘭、西の、各国の社会科教師のゲートキーピングと支援のメカニズムの研究を継続していきたい。また、渡航ができない状況にも対応できるように、米、豪、蘭、西、を中心に、これまで調査研究してきたシンガポール、フィンランド、イギリスも加えて21世紀型学力を目指す国々のシティズンシップ育成を目指す社会科授業の特質を、共通する分析フレームワークを設定し、メールやズームなどを活用し、教師へのインタビュー調査などを通して整理していきたい。また、ESD社会科教育との関連でカナダを訪れたことがあり、国連のアジェンダ21作成者のチャールズホプキンス氏と交流がある。そこで、チャールズホプキンス(ヨーク大学)との協働のゲートキーピングによりSDGsの視点からの社会科授業プログラムについて構築することも構想している。また、もし、今年度後半から次年度に、渡航が可能になれば、米・豪、蘭、西での社会科授業の参与観察と逐語授業記録を作成し分析する。米、豪はこれまでの調査校を中心に、オランダは久野がSui Lin Goei氏と現地校の調整をする。田中は生徒の主権者意識を調査する。酒井は2019年既にオランダのユトレヒト大学のWALSの授業研究分科会に参加、2019年9月にvisiting researcherとしてスペインのコンペルテンセ大学を訪れ、Gonzaro Jover氏に紹介された学校へ出かけている。今後コロナ禍の収束を期待し状況を鑑みながら、海外の学校の社会科教師のゲートキーピングや支援の研究調査を実施したい。当初の計画のように渡航が難しい場合は、国内の小中学校の社会科教師のゲートキーピングと支援の研究にシフトすることも考えており、今後の状況に対応して研究を進めたい。
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Causes of Carryover |
コロナ禍のため、当初予定した海外への渡航調査ができなかった。 そのため、海外旅費の出費がなかった。次年度は、コロナ禍の状況を見ながら機会があれば渡航調査や国内調査の旅費に使用したいと考えている。また、コロナ禍の状況が改善されなければ、研究に役立つ物品や本の購入などに活用したい。
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