2020 Fiscal Year Research-status Report
欧州仏語圏4か国における幼児教育義務化の政策意図と制度的条件に関する比較研究
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20K02480
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
藤井 穂高 筑波大学, 人間系, 教授 (50238531)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 幼児教育の義務化 / フランス / ルクセンブルク |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度のフランス語圏4か国のうち、フランスとルクセンブルクに対象を絞り、議会資料等を主な資料として、義務化の論理を明らかにした。 フランスについては、2019年の義務教育改革の議論を整理した。同年の「信頼できる学校に関する法律」(第11条)により、教育法典L.131-1条が「義務教育は、すべての子どもに対して、3歳から16歳までとする」と改正される。同法の趣旨説明書によると、同規定は、一方では、フランスの教育制度における保育学校の教育上の重要性を認めるものであり、他方では、不平等の縮減、特に言語面での不平等の縮減における、小学校前の教育の決定的役割を強化するものである。2018年にマクロン大統領により「保育学校会議」が開催されている。同会議の資料によると、3歳児義務化の趣旨として、科学的研究によると0歳から5歳までの早期の認知的刺激が学業成功、学業の水準及び職業への参入を促進することが示されていること、したがって政府の意図としてはできるだけ早期からもっとも「弱い」児童に働きかけることにあること、3歳児から97%の子どもは就学しているが、不十分な形態であること(3歳児の就学率の地域間格差)などが示されている。 一方、ルクセンブルクについては、2009年義務教育法に至るまでの政策動向を整理した。同国では、1912年の初等教育組織法において義務教育の開始年齢は6歳と定められたが、早くも1964年規則により幼稚園の設置義務が市町村に課され、1976年規則により5歳児の、1992年規則により4歳児の、幼稚園への就学義務が規定されていた。2009年法は就学義務違反に対する罰則を定めるものであった。 なお、両国とも、研究成果を論文の形で示すに至らなかった。フランスについては次年度の日本比較教育学会の特集論文として、ルクセンブルクについては筑波大学学系論集に論文として発表する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
フランスについては議会資料等の収集は終わっており、その成果の一部は次年度の学会誌に発表することが決まっている。ルクセンブルクについては2009年度の改革に関する議会資料は収集済みであるが、もともとの出発点が早く、かつ、法律ではなく行政命令の形で始まったため、その部分の資料収集が十分には進まなかった。このため次年度では現地での資料収集が必要となる。 本研究は、フランス、ルクセンブルクとともに、スイスとベルギーを調査対象としている。このうちスイスについては前回の科研費による資料の収集は一定程度終えているため、次年度はベルギーの改革に関する議会資料の収集にもあたる予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
4年計画の2年目に当たる次年度については、本年度の研究をフランスとルクセンブルクにつき、論文の形で発表する予定である。ただし、ルクセンブルクについては先述の通り、国内での資料収集には限界があるため、現地調査を予定している。 また、これまでのわが国の先行研究において、全くの未着手状態にあるベルギーについては、5歳児就学義務化の改革につき、議会資料の収集にの義務教育に着手する。 なお、スイスについては、かなりの資料をすでに前回の科研で収集しているため、近年の動向も含めた形で、計画の3年目に論文として発表することを計画している。
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Research Products
(1 results)