2023 Fiscal Year Annual Research Report
Quest for History of Enviromental Education in Belarus; from Catastorophe to Regional Regeneration
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20K02481
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
安藤 聡彦 埼玉大学, 教育学部, 教授 (40202791)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | チェルノブイリ原発事故 / ベラルーシ / 記憶の継承 / 環境教育史 |
Outline of Annual Research Achievements |
2023年度については関連する資料(主に英語文献)を収集しつつ、チェルノブイリ原発事故後に主にゴメリ州内各地の町や村からミンスクに移住してきた人々によって構成される「移住者の会」のコアメンバー2名にオンラインインタビューを実施した。その作業を通して浮上してきた「チェルノブイリ原発事故の記憶の継承」をめぐる現状は、以下の通りである。 *チェルノブイリ原発事故から37年が経過したが、チェルノブイリをめぐる語りは、日常的なものから、ますますイベント的なものへとなってきている。学校では、教科「生活の安全の基礎」のなかでチェルノブイリ原発事故についての学習は行われることになっているが、ほとんど知識や関心のない人たちも少なくない。 *ゴメリ州南部のチェルノブイリ原発から近い町や村の郷土博物館や学校博物館の多くにはチェルノブイリ原発事故関連のコーナーがある。ミンスクでは、非常事態省の博物館と科学アカデミー附属民俗日常生活博物館チェルノブイリ事故関連コーナーがあり、いくつかの(とりわけ移住者集住地域近隣の)学校の博物館にもコーナーがある。どこの学校博物館にも必ず戦争展示はあるが、チェルノブイリ原発事故についてはまったく校長の判断で決まる。 *移住者の会では30年あまりの間に1万人ほどの移住者の個別面接を通して膨大な記録を残してきているが、そうした記録の引き取り手はいまのところ存在していない。まずは自分の家族のなかでしっかり引き継いでいくしかない。 ベラルーシにおけるチェルノブイリ政策は、事故後20年前後から大幅に縮小されてきているが、「記憶の継承」についても記念碑の建設など、これまでなされてきた以上のことがなされる動きはいまのところ見出せない。ウクライナとの戦争などのなかで、「チェルノブイリ原発事故」をめぐる記憶の意味づけや継承方法がどう変化していくのか、引き続き注視が必要である。
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