2021 Fiscal Year Research-status Report
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20K02514
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
國仲 寛人 三重大学, 教育学部, 准教授 (70402766)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 学校規模 / 確率過程 / 統計分布 / シミュレーション / データ解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、日本の小学校1校あたりの児童数の統計分布(以後、小学校規模分布とする)の変化をデータ解析により調べ、そこに見られる統計的な性質を詳細に調べることである。また、今後小学校規模分布がどのように変化していくかを予測することも目的としている。 令和3年度の研究計画は(1)小学校規模分布が戦後どのように変化してきたのかを調べること、(2)学区制を持つ海外のデータについても調べること、の2点であった。しかし、昨年度行った解析の結果、都道府県によってワイブル分布やガンマ分布等、指数を基本とする様々な統計分布が現れることがわかったものの、統計分布の特定に関してはおおまかな解析しか行っておらず、小学校規模分布の時間変化を調べる前に、精密な解析手法の確立を優先する必要があった。 そこで、今年度の研究においては、各都道府県に見られる小学校規模分布の性質を詳細に調べ、より定量的に統計分布の出現頻度を調べた。特に統計分布関数の種類の特定に関しては、AIC(赤池情報基準量)を用いた精密な解析を行った。その結果、小学校規模分布がワイブル分布に従う自治体が最も多く、指数分布やガンマ分布に基づく混合分布に従う自治体も数多く見られることがわかった。このような、指数関数を基本とする分布の出現には通学区域の設定の仕方が影響していると思われるが、混合分布の出現には学校統廃合の実施件数も影響しているのではないかと思われる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
当初令和3年度に小学校1校あたりの児童数のデータの電子化を外部の調査会社に委託する予定であったが、予想よりもデータが高額で入手が困難であることがわかった。また昨年度に引き続き、オンライン授業の準備により研究時間が削減され、『全国学校総覧』(日本全国の学校規模に関するデータブック)の電子化もできなかった。そこで、各都道府県に見られる小学校規模分布の性質をより詳細に調べ、統計分布の出現頻度を定量的に調べた。具体的には、各都道府県の小学校規模分布を作成し、数式処理ソフトMathematicaを用いて候補となる統計分布を複数挙げ、AIC(赤池情報基準)を計算することでより精密に小学校規模分布を近似する統計分布の種類を特定した。その結果、地域別に見ると、東京、大阪、愛知等の多くの自治体でワイブル分布に従う小学校規模分布が見られることがわかった。また、半正規分布や指数分布などの非対称性の強い分布も広い範囲で見られ、混合分布も多くの自治体で見られることがわかった。これらの分布関数の出現には、学区の割り方だけでなく、地域の児童数の増減率や学校の統廃合件数なども影響していることが予想される。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では過去の小学校1校あたりの児童数のデータの解析を進め、小学校規模の時間変化をモデル化した上で、小学校規模分布の将来予測をする方針であった。しかし全小学校の電子データを複数年度に渡って入手することは、金銭的にも労力的にも困難であることがわかった。そこで、今年度に得られた研究結果に基づいて、次の通り研究を進める。 まず、これまでに都道府県毎の小学校規模分布がわかっているので、特徴的な分布を持つ地域を選び出す。特に過小規模校や過大規模校などの割合が多く見られる地域を優先的に選び出し、それらの地域のデータのみを入手する。 次にそれらの地域の小学校規模の時系列データを作成し、それらに基づいて小学校規模の時間変化のモデルを作成する。具体的には時間変化をランダム乗算過程というモデルでモデリングするが、そのモデルに含まれる確率的なパラメータを、時系列データから推定する。 最後にそのモデルを用いて小学校規模の時間変化のシミュレーションを行う。現在の小学校規模分布を初期分布とし、小学校規模を時間変化させると将来的にどのような小学校規模分布が得られるかを調べる。それにより、小規模校、適正規模校、大規模校の割合の変化だけでなく、過小規模校、過大規模校の出現頻度についても予測を行う。
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Causes of Carryover |
昨年度に引き続き、コロナウィルス感染症の世界的な流行の影響で、参加予定だった国際学会が軒並み中止またはオンライン開催となった。国内学会もオンライン開催となったため旅費が必要なくなり、使用額に大幅な変更が生じた。今年度の予算は、論文投稿に要する費用や、学会・研究会への参加に要する費用に充てる予定である。
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