2022 Fiscal Year Research-status Report
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20K02517
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Research Institution | Wakayama University |
Principal Investigator |
江利川 春雄 和歌山大学, 学内共同利用施設等, 名誉教授 (10259880)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 教員講習 / 中等教員 / 中等学校 / 英語教育 / 語学教育 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和4年度は1年間の延長を含む4年計画の3年目で、1896(明治29)年以降の文部省英語科講習会関連の調査に加えて以下の調査研究に重点を置き、論文発表、学会発表、資料復刻、著書の刊行を行った。 (1)1923年に創設された半官半民の「文部省内英語教授研究所」が毎年開催した「全国英語教授研究大会」、および同研究所が1942年に「語学教育研究所」に改組されて以降の「語学教育研究大会」等における語学教員講習の実態解明を行った。 (2)その基礎資料として語学教育研究所編の雑誌『語学教育』(1942-1972年、全122号・114冊)を、ゆまに書房から令和4年6月と12月に全10巻で復刻・刊行した。『語学教育』全114冊に掲載された論考・記事は1,235篇で、内容別(12分類)では「研究所・研究大会」が359件(28.9%)で第1位を占め、2位は「英語教育」の314件(25.5%)で、特に「指導法」の101件(8.2%)が多い。語学教育研究所は毎年の研究大会、英語教授法講習や実地指導などの活動を展開し、それらを誌面に反映させることで語学教員の指導力向上を図っていた実態が明らかになった。 (3)『英語教育論争史』(講談社選書メチエ、令和4年9月)および『英語と日本人:挫折と希望の二〇〇年』(ちくま新書、令和5年1月)を単著として刊行し、ともに英語教員講習史に関する知見を盛り込んだ。両書に関連して、第25回神戸英語教育学会(令和4年12月)で「英語教育論争史から学ぶ」、日本英語教育史学会第292回研究例会(令和5年3月)で「自著を語る 『英語と日本人:挫折と希望の二〇〇年』」と題した講演と討論を行った。日本英語教育史学会第39回全国大会(令和5年5月)では「雑誌『語学教育』(1942-1972)の包括的研究」をテーマに発表する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナ禍による研究条件の悪化に加えて、当初の計画にはなかった文部省内英語教授研究所(1924年創設)および改組後の語学教育研究所(1942年以降)における語学教員講習が大規模かつ継続的に行われていたことが判明したために、基礎資料となる研究所の機関誌『語学教育』全114冊の完全復刻版全10巻の刊行と、別巻の総目次・索引・解題の作成に多大な時間を割くに至った。 また、令和4年度には求められて2冊の単著を刊行し、それに関連する学会での講演と討論を行い、いずれも英語教員講習史に関する知見を提示した。 以上によって研究計画に若干の遅れが生じたが、研究内容としては当初の予想以上に充実したものとなり、これらの活動を通じて最終年度の報告書作成にとって貴重な素材と知見を得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
令和5年度は最終年度であるため、研究成果報告書の作成に最大の比重を置く。大規模な資料『語学教育』(全114冊)の判明などによって当初の計画を1年延長したが、その完全復刻版の刊行および内容検討を終えているため、これまでの研究成果と合わせて、年度内の研究終了は可能である。 明治以降の英語教員講習に関する報告書は、中心を文部省主催講習に置きつつも、東京・広島の高等師範学校・文理科大学主催の講習、軽井沢夏期大学や帝国教育会主催など半官半民の講習、国民英学会・正則英語学校など民間主催の講習、英語教授研究所・語学教育研究所主催の講習、地方行政機関による講習などを含む明治以降英語教員講習の全体像を明らかにする予定で、その見込みは立っている。 上記の報告書をまとめるとともに、可能な資料・データ類はインターネットで公開する予定である。それらによって、今後の英語教員研修の質的向上と英語教育学の発展に寄与したい。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由は、研究計画を1年延長して4年間とし、最終の令和5年度の研究に必要な経費を確保したため。 使用計画は、主に研究成果報告書の作成経費で、他に若干の図書・資料購入費とする予定である。
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Research Products
(9 results)