2020 Fiscal Year Research-status Report
ケンブリッジ学派の思想史方法論を踏まえたペスタロッチ教育思想の再検討
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20K02519
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Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
椋木 香子 宮崎大学, 教育学部, 教授 (00520230)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鳥光 美緒子 中央大学, 文学部, 教授 (10155608)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ペスタロッチ / 教育思想 / ケンブリッジ学派 / 共和主義 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、1960年代に始まったケンブリッジ学派の政治思想史研究の方法論を踏まえ、ダニエル・トレーラーの先行研究に依拠しながら、ペスタロッチの教育思想を再検討することである。本年度は、ケンブリッジ学派の政治思想史研究の中の鍵概念である「共和主義」について、我が国における政治思想史・社会思想史研究を中心に整理するとともに、スイスにおける国家意識の形成と共和主義的伝統についての研究動向について文献研究を実施した。 社会思想史学会年報『社会思想史研究』No.32(2008)では、共和主義研究はすでに多様化し分散しており、今回注目するポーコックの「古典的共和主義」の捉え方も研究者によって多様である。また、ポーコックはルネサンスのファイレンツェから17世紀イングランド、18世紀ブリテン、18世紀末から19世紀初めの共和主義の系譜を示したが、ペスタロッチが活動したスイス、地理的に近いドイツなどは扱われていない。 2000年以降、ペスタロッチが活動した18世紀スイスにおける共和主義に関して、研究書がいくつか出されている。これらはポーコックの研究の影響を受けていると考えられるが、ポーコックに依拠しているわけではなく、スイスの歴史的文脈における共和主義的伝統に着目し、スイスにおける国家意識の形成や市民社会の形成について論じられている。ペスタロッチはスイスが近代国家として形成される過程に深く巻き込まれて、彼の教育思想を形成していると考えられるため、スイス史やスイスの共和主義の伝統を踏まえたペスタロッチ教育思想の解釈が必要である。特に、思想形成初期に注目する必要があると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウイルス感染拡大の影響で、大学業務の負担が増大し、文献研究が予定通り進んでいない。そのため、政治思想史・社会思想史研究などの専門家を招いての研究会や、海外研究者との意見交換なども実施できなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の研究計画では、先行研究を踏まえ、ペスタロッチの中期の著作である『探究』(1797)における共和主義的な「徳」概念の再検討を行う計画であったが、本年度の研究から、共和主義的な思想形成がなされたと考えられる青年期の再検討が必要だと考えられた。近年、スイスにおけるスイス史研究、共和主義的経済学の形成に関する研究などが出されているため、それらを踏まえたテキスト分析を行う。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染拡大のため、当初計画していた研究会の実施及びスイス・ドイツ渡航が実施できず、旅費を全く使用しなかった。感染状況が落ち着き、県外への出張や海外渡航が可能になった場合に旅費を使用する。
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Research Products
(1 results)