2021 Fiscal Year Research-status Report
ケンブリッジ学派の思想史方法論を踏まえたペスタロッチ教育思想の再検討
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20K02519
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Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
椋木 香子 宮崎大学, 教育学部, 教授 (00520230)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鳥光 美緒子 中央大学, 人文科学研究所, 客員研究員 (10155608)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ペスタロッチ / 教育思想 / ケンブリッジ学派 / 共和主義 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、ケンブリッジ学派の政治思想史研究の方法論を踏まえ、ダニエル・トレーラーの先行研究(2006)に依拠しながら、ペスタロッチの教育思想を再検討することである。当初の研究計画では、トレーラーの先行研究で十分に検討されていない、ペスタロッチの中期の著作『探究』(1797)を中心に検討を行う予定であったが、令和2年度の研究から、ペスタロッチの思想形成初期の青年期から最初の著作活動の時期に着目する必要が出てきた。ケンブリッジ学派の政治思想史研究の鍵概念である「共和主義」に関する研究は、政治思想史・社会思想史分野ではすでに多様化しており、ペスタロッチが活躍した18世紀スイスでは、共和主義をめぐる状況もイギリスやイタリアとは違った状況であったことが先行研究から分かってきた。 トレーラーは、ペスタロッチが青年期に大きな影響を受けたチューリッヒの「古典的共和主義」の伝統が最も反映されているのが『わが祖国の自由について』(1779)であるとし、その後の彼のキャリアを決定づけた著作として重視している。一方で、近年のスイスの共和主義に関する研究において、Kapossy(2007)は18世紀スイスの都市ベルンでの共和主義の政治経済学について述べており、その流れを引き継いだのが老年期のペスタロッチであると述べている。ペスタロッチは青年期にベルン出身のチッフェリーの元で農業の見習い修行をしたり、最初の貧民施設の財政支援をベルンの都市貴族であったチャルナーに依頼しており、ベルンの政治的・経済的思潮の影響を受けていた可能性がある。スイスは当時はまだ統一された近代国家ではなく、いくつかの都市国家があったが、それぞれの地域で経済や政治の状況は異なっていた。それらの事情がペスタロッチの初期の教育思想形成に影響を与えたと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
令和2年度の新型コロナウイルス感染拡大の影響で、当初予定していた文献研究が遅れたため、昨年度の研究もその影響により、当初の研究計画よりも遅れている。また、政治思想史・社会思想史などの専門家を招いての研究会や、海外研究者との意見交換などもできていない。また、政治思想史・社会思想史分野の共和主義研究は複雑化しており、スイス史に関する研究に関しても、追加で外国語文献の検討も必要となっていることから、予想よりも時間がかかっている。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度までの研究成果を踏まえ、トレーラーが着目しているペスタロッチの前期の著作『わが祖国の自由について』(1779)を中心に、ペスタロッチの教育思想を当時の政治思想の文脈に位置付けるための文献研究及びテキスト分析を行う。トレーラーの研究に依拠しつつも、トレーラーの解釈の妥当性を検討する必要性が出てきたためである。ヨーロッパにおけるスイス史研究に加え、商業と貿易に関する18世紀スイスの経済史的研究等も見つかったことから、これらの研究を踏まえて、当時のスイスの共和主義をめぐる状況を明らかにしつつ、当時の「共和主義的言語」を分析枠組みとして、『わが祖国の自由について』を分析し、ペスタロッチの教育思想形成初期の状況を明らかにする。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染拡大のため、当初計画していた研究会の実施及びスイス・ドイツ渡航が実施できず、旅費をほぼ使用しなかった。感染状況が落ち着き、県外出張や海外渡航が可能になった場合に旅費を使用する。
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Research Products
(4 results)