2022 Fiscal Year Research-status Report
ケンブリッジ学派の思想史方法論を踏まえたペスタロッチ教育思想の再検討
Project/Area Number |
20K02519
|
Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
椋木 香子 宮崎大学, 教育学部, 教授 (00520230)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鳥光 美緒子 中央大学, 人文科学研究所, 客員研究員 (10155608)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | ペスタロッチ / 教育思想 / ケンブリッジ学派 / 共和主義 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、ケンブリッジ学派の政治思想史研究の方法論を踏まえ、トレーラーの先行研究(2006)に依拠しながら、ペスタロッチの教育思想を再検討することである。これまでの研究から、当初予定していたペスタロッチの中期の著作ではなく、彼の思想形成初期の著作活動に着目する必要が出てきたことから、令和4年度はトレーラーが重視している『わが祖国の自由について』(1779)(以下、『自由論文』)のテクスト分析を中心に行なった。 トレーラーが『自由論文』に着目した理由は、当時のチューリッヒの「古典的共和主義」の伝統が最も反映されており、その後の彼のキャリアを決定づけたと考えているからである。一方、近年のスイスの共和主義に関する研究において、Kapossy(2007)は18世紀スイスの都市ベルンの共和主義的な政治経済学の流れを引き継いだのが老年期のペスタロッチであると述べている。 ケンブリッジ学派の政治思想史研究の鍵概念である共和主義に関する研究においても、その内実は地域や時代により多様化していることが指摘されており、ペスタロッチがどのような共和主義思想の影響を受けているかについては、より厳密に検討する必要がある。 現段階までの『自由論文』のテクスト分析では、ペスタロッチが当時の商業の発展について強い危機感を持っており、経済的な発展と奢侈の制限の問題について論じていることが示されているが、これらの言説と当時の時代人の言説との関連・影響を検討する必要がある。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本研究初年度の新型コロナウイルス感染拡大の影響で、当初予定していた文献研究が遅れたため、全体的に当初の計画よりも遅れている。また、政治思想史・社会思想史分野の共和主義研究は複雑化しており、スイス史に関する研究に関しても、追加して検討が必要な外国語文献が見つかっていることなどから、当初予定よりも時間がかかっている。さらに、研究を進めるにつれ、共和主義に関する政治思想の研究だけでなく、18世紀の政治的言語のコンテクストに登場してきた「商業社会」の概念についても視野に入れる必要が出てきており、政治経済思想に関する文献も確認を行なっているため、研究が遅れている。
|
Strategy for Future Research Activity |
昨年度までの研究成果を踏まえ、『自由論文』を中心としたテクスト分析を通して、ペスタロッチの教育思想を当時の政治思想の文脈に位置付ける。『自由論文』を執筆するまでのペスタロッチの思想的背景について、歴史的事実に即して明らかにするとともに、同時期に執筆している『消費制限論』(1780)についても併せて分析を行うことで、ペスタロッチの共和主義的な政治経済思想と教育思想の関連について明らかにする。
|
Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染拡大防止のため、当初計画していた研究会の実施及びスイス・ドイツ渡航が実施できず、旅費をあまり使用しなかった。海外渡航が可能になった場合に旅費を使用する。
|
Research Products
(1 results)