2020 Fiscal Year Research-status Report
いじめ自殺の実態統計の整備および形式知化による学校支援
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20K02520
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Research Institution | Aomori University of Health and Welfare |
Principal Investigator |
瀧澤 透 青森県立保健大学, 健康科学部, 教授 (40389680)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | いじめ自殺 |
Outline of Annual Research Achievements |
いじめ自殺があった場合、第三者委員会による検証が行われるようになった。これは平成23(2011)年6月の子どもの自殺が起きたときの調査の指針の公表と平成25(2013)年のいじめ防止対策推進法の施行が契機となっている。性別や学年などいじめ自殺の情報を量的に検討することは、未然防止に資する形式知を得ることができる。これら情報は、本来であれば第三者委員会の報告書にあたるべきだが、個人情報保護の観点等により簡単ではない。一方でいじめ自殺はその社会的関心の高さから、新聞報道がなされることがほとんどであり、性別や学年といった基本的な情報であれば入手することができる。そこで本研究は第三者委員会がいじめを認定した事案について、新聞報道も活用しながら、いじめ自殺の実態を量的に明らかにすることを目的とした。 2020年度は、既に収集していた公表されている第三者委員会報告書と新聞報道より、平成24(2012)年4月から平成31(2019)年3月までの7年間に起こった小学生,中学生,高校生のいじめ自殺について量的に検討を行った。結果は次の通りだった。7年間のいじめ自殺は,確認ができたもので小学生4例,中学生39例,高校生は21例の合計64例であった。性別では中学生と高校生ともに男子が多かった。また学年別に見ると、中学生と高校生ともに2年生が多かった。いじめ自殺の性差については元々の中高生の自殺全体に見られる性差と変わらなかった。しかし,学年差については,中学生では1年生と2年生が統計的に有意に高く3年生が有意に低かった。これら分析と、長期休暇明けの状況やいじめ発生から第三者委員会によるいじめ認定までの期間といったデータとともに、表やグラフを用いて論文にまとめ学会誌に投稿を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
資料収集は既に済ませていたため、データ分析および論文執筆が初年度の主な研究作業であった。これらが順調に進んだことより、令和2年度中に国内の学術雑誌に論文投稿を行うことができた。上記より進捗状況はおおむね順調と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、投稿中の論文が掲載された場合、研究計画通りに、その内容をベースにし啓発普及を主目的とした記事を複数執筆し、各専門誌への投稿を行う。さらに新たなデータ収集を行い学術論文の続編に向けた研究を準備する。このほか、アメリカおよび諸外国におけるいじめ自殺の文献検討を行うことで、自殺予防に資する知見を得ることとする。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症の拡大を受け、一切の研究出張を行わなかった。またオンラインを含めた学会発表も行っていない。そのため次年度使用が生じてしまった。今後も学会発表や資料収集に伴う旅費の使用は従来通りの執行が見込めない。オンラインでの学会参加を増やすことを目標としたい。また旅費については、諸外国のいじめ自殺の実態把握と予防策の文献検討を新たに行うことで代替したい。
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