2021 Fiscal Year Research-status Report
精神分析的教育学の新たな展開―教師教育・保育者養成への接続可能性の検討
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20K02524
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Research Institution | Chuo University |
Principal Investigator |
下司 晶 中央大学, 文学部, 教授 (00401787)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
須川 公央 白梅学園大学, 子ども学部, 准教授 (80581561)
波多野 名奈 千葉経済大学短期大学部, その他部局等, 准教授 (80574201)
関根 宏朗 明治大学, 文学部, 専任准教授 (50624384)
野見 収 沖縄国際大学, 法学部, 准教授 (00511164)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 精神分析 / フロイト / 教育哲学 / 教育人間学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、「精神分析と教育」との関係に関する動向を調査し、新たな視点を提示することである。精神分析は世界的に教育に大きな影響を与えてきたが、一部を除けば、教育学への積極的な応用はなされてこなかった。そこで本研究では、精神分析を踏まえた教育・保育のあり方について、以下の検討を行った。 第一に、精神分析学と教育学との関係を問いなおし、精神分析の観点を踏まえた、新たな教育学のあり方を提示することを目指した。これについては、教育哲学会において「精神分析と教育――教育理論としてのフロイト思想」と題した共同研究を行い、教育哲学会『教育哲学研究』123号に発表した。また、この内容を発展させた形で、教育哲学会の国際E-Journalに発表した(下司 晶、須川公央)。 第二に、道徳教育、科学的認識形成、市民性形成の方途を考えるに際しての精神分析思想の意義について模索した。フロイトの科学的な世界観は、現代の市民性教育おいても重要な立脚点の一つとなる。また、精神分析理論を軸にしながら、「政治的なるもの」の表象について検討し、政治と教育、道徳教育について検討を行った。この際は特に、「生命」という観点が主軸となった(野見収、関根宏朗)。 第三に、精神分析理論を踏まえた乳幼児解釈・保育者の役割を検討した。現在は、乳幼児期の生活経験の質が重要視される現在、保育学においてはいまだ、ジョン・ボウルィビィのアタッチメント理論が根強く影響力を保っている。しかし、その受容は保育実践・育児の方法論として表面的であり、自我形成論、自他関係論の本質に踏み込んだ議論はいまだ少ない。このような問題意識のもと、行動科学としてのアタッチメント理論ではなく対象関係論の立場から自他関係成立のプロセスを追うため、E.ビックの理論を手がかりに、自我形成における皮膚接触の意義について論じた(波多野名奈)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和2年度はカナダと北米、令和3年度はイギリスを中心として、精神分析と教育の関わりについて、視察とインタビューなどの現地調査を行う予定であったが、残念ながら、新型コロナウィルスの感染拡大によってこの計画は変更を余儀なくされた。本研究課題のメンバーは、これをやむを得ないことと受け止め、当初の目的は変更せずに、研究手法を現地調査から文献調査とオンラインによる調査に変更し、研究を推進することにした。幸いにも、カナダのデボラ・P・ブリッツマン博士の協力を得て、オンラインにて国際的研究を行うことも出来た。 現地超を行った場合に比べると間接的であるとはいえ、一定程度は海外の動向を踏まえて研究を行うことが出来たと考えている。具体的には、当初の目的であった精神分析を踏まえた教育学の刷新、新たな保育理論の探求と保育者養成への寄与、道徳教育や市民性教育における精神分析の意義についても、海外の動向を踏まえつつ、これを検討することが出来た。 以上のことから、海外の調査研究は断念せざるを得なかったとはいえ、研究自体はおおむね順調に進展していると判断する。現時点で十分とはいえない側面については、令和4年度の研究にてフォローしていきたい。
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Strategy for Future Research Activity |
上述のように、当初はカナダと北米(令和2年度)、イギリス(令和3年度)の現地調査を行う予定であったが、新型コロナウィルスの感染拡大によって困難となった。令和4年度は、ウィーンおよびフランクフルトでの調査研究を行う予定であったが、令和4年5月現在、新型コロナウィルス感染症の感染拡大については、状況の大きな好転を期待することは難しいように思われる。 そこで、これまでと同様、状況を確認しながら、可能であれば海外での調査研究を視野に入れつつ、平行して文献調査とオンライン調査を行う予定である。このため、旅費に充てる予定であった予算は、上記研究資料の入手や、研究成果の発表報告に振り替える可能性がある。引き続き、カナダ、トロント(ヨーク大学)のデボラ・P・ブリッツマン博士の協力を仰ぐ。 研究の目的である、精神分析による教育学の刷新や、保育理論および保育者養成についての新たな観点の提供、道徳教育や市民性教育における精神分析の意義の考察については、令和2年度および3年度の研究成果を踏まえ、より具体性を持った形で、これを研究していきたい。 研究成果は、日本教育学会、教育哲学会、教育思想史学会、日本保育学会等の学会において発表する。また、教育哲学会『教育哲学研究』、教育思想史学会『近代教育フォーラム』、ないし各大学の紀要に論文を投稿する予定である。また、書籍媒体での発表も視野に入れている。
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Causes of Carryover |
令和3年度は、当初はイギリスにおける精神分析と幼児教育・保育者養成の関わりを検討予定であった。具体的には、ロンドンのアンナ・フロイト・センター、タビストック・クリニックと、ローハンプトン大学にて、精神分析と教育・福祉の関連、保育者養成への応用を調査する予定であり、そのための旅費も計上していた。しかし、新型コロナウィルスの感染拡大によって、現地への渡航は断念せざるを得なかった。このため、旅費として計上していた分は令和4年度に繰り越すこととなった。 令和4年度は、海外での調査研究を断念したわけではないが、文献調査とオンライン調査で代替する可能性が高い。このため、現在のところ、旅費に充てる予定であった予算は、研究資料の入手や、研究成果の発表報告かかる費用に振り替える予定である。 いずれにせよ、当初の研究目的が達成できるよう努力していく。
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Research Products
(9 results)