2021 Fiscal Year Research-status Report
継続的で一貫性のあるPBLカリキュラムの、卒業後の学習特性への影響に関する研究
Project/Area Number |
20K02525
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Research Institution | Tokyo City University |
Principal Investigator |
伊藤 通子 東京都市大学, その他部局等, 教授 (00537037)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | problem-based learning / project-based learning / 高専 / PBL教育プログラム / 卒業生調査 / 学習効果 |
Outline of Annual Research Achievements |
わが国の国際競争力やイノベーション力の落ち込みへの対応として、経済産業省は、「イノベーションを起こすための知的資本の最大の要素である人材は国力の根幹そのものであり、その供給システム(教育・人材育成)の更新が不可欠(2020)」とし、文部科学省は「今こそ,PBLや産学連携教育とその促進策を実行すべきである(2018)」としている。本研究では、そのようなPBL教育の期待に応えることと、技術者教育におけるPBLの質的向上をめざしている。そのため、高専の15歳からの22歳までの学生を対象にしたPBL実践において、「継続的で一貫性のあるPBL」を体験した卒業生(30歳前後)の現在の学習特性を調査、分析し、PBLによる卒業後の学習への影響を検証することを目的として進めている。 PBLを6年間継続的に受講した卒業生の学習特性と仕事に対する姿勢や価値観が、従来の高専教育を受けた卒業生と比較してどのような特徴がみられるかを測ることとし、具体的には、2005~13年の間にPBL教育プログラムを受講した、T高専K科(6年間のPBL教育プログラムを受講)と他3学科(1年間のみ1つのPBL科目を受講)の卒業生を対象に、2020年度から2021年度にかけて調査を実施した。 同窓会名簿掲載の214名中、実質送付178件に対し、質問紙調査(回答率:24.2%)およびインタビュー調査(卒業生19名から協力申し出あり有効回答12名)を実施し、量的・質的の混合研究法にて分析を行って両群を比較し、本研究課題に対する一定の結果を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究期間3年間の中~後期にあたる2021年度は、研究前期(2020~2021年度)に実施した質問紙調査を補完する目的でインタビュー調査を計画していた。すなわち、質問紙調査のデータは代表性のあるデータとみなしてはいたが、統計分析の総数としては少ない。そこで,回答の妥当性を確認し結果の信頼性を高めるために、質問紙法に加えインタビュー調査を実施した。対象の卒業生協力者は予測以上に全国に散らばっていたが、2020年度からのコロナ禍により産業や教育等の広い分野にオンラインツールの普及が進んだことによって、2021年度は、直接、出向くことなく効率的にインタビュー調査が進んだ。また、予定していた出張費分を研究環境を整える機材等に投入することができたため、その効果も発揮できた。このように、調査が滞りなく進み、その後の分析も当初の計画以上に進展した。 一方、申請時に予定していた視察や、海外の学会参加等による意見交換およびリアルタイムの情報収集の機会などには予定通りの参加が叶わず、調査のプロセスに、外部からの知見を組み込みながら進めたいと考えていた点については、若干の不十分さが否めない。しかしながら、その点については2021年度終盤から進んだ行動制限緩和により、種々の活動を一部開始している。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の最終年度となる2022年度は、研究結果の発信と得られた知見を元にした幅広い議論の機会をもつ予定である。具体的には、2022年度に予定していた物品費を、2020年度、2021年度に予定していながら叶わなかった国内外への視察や情報交換の機会となる出張に充てることにより、積極的に成果発表の活動を行いたい。 加えて、WEBによる発信も実施する予定であり、それに関する環境整備を進め、以上の通り、対面およびオンライン両方での情報発信と議論を計画している。
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Causes of Carryover |
2021年度は2020年度に引き続き、新型コロナウィルスによる感染拡大防止のため、出張等への行動制限があった。そのため、予定していた視察や遠方在住者へのインタビュー、さらには海外の学会参加等による意見交換やリアルタイムの情報収集の機会などへの参加が叶わなかったためである。 ワクチン接種状況や行動制限の緩和も進む中、国内外への出張が可能となり次第、繰り越した助成金を利用して、得られた知見を元にした幅広い議論の機会をもつ予定である。
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