2022 Fiscal Year Research-status Report
戦後保健室の成立と機能拡大過程ー実践を創出する空間の重層性と多機能化ー
Project/Area Number |
20K02531
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Research Institution | Ibaraki University |
Principal Investigator |
竹下 智美 茨城大学, 教育学部, 准教授 (90735193)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 学校衛生施設・設備 / 衛生室 / 養護実践 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、1941(昭和16)年に制度化された「衛生室」から1958(昭和33)年の戦後学校保健法制定に伴って必置に至った「保健室」における機能的展開の過程 を明らかにすることを目的とし研究を進めている。令和4年度は、昨年に引き続き、学校衛生関係史料を中心とした学校衛生施設・設備品の第一次史料の収集を進め、保健室の設置品および設備品の配置の変化を学校衛生施設(衛生室)の設置位置や見取り図とそこに設置された設備品の図像的(物理的) 変化とその特徴について整理し、読解・分析を進めた。また、昭和16年に制度化された「衛生室」から1958(昭和33)年の戦後学校保健法制定に伴って必置に至った「保健室」における ソフト面、すなわち養護訓導から養護教諭へ保健室実践については、和歌山県で開催された日本学校保健学会において、テーマ「保健室の機能拡大過程と養護実践」で発表を行った。本発表では、昭和初期に台頭した健康教育運動及び1929年「学校看護婦ニ関スル件」 を背景に、同室に設置された設備・設備品の変遷の詳細を追いつつ、設備品に規定されながら変化する学校看護婦/養護訓導の職務・仕事の変容を明らかにした。そこから①制度化されずとも、学校衛生施設・設備は地方の学校においても確実に設置が進んでいたこと、②その設備は、これまで、一人ひとりになされていた治療や予防を効率的に行うことを可能にするための設備として形態的に変化を見せていたこと、③これら治療の効率化は、疾病予防と早期発見に力点をおいた学校保健活動へのステップとして、自他の健康を意識した学校保健活動の展開を促したことを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
コロナウイルス感染症の影響により、令和3年度の史料の収集・整理に遅れが生じたため、令和4年度も追加資料の収集と史料読解作業を行いながら進めているため。
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Strategy for Future Research Activity |
令和4年度の計画に引き続き、学校衛生施設(衛生室)の設置位置や見取り図とそこに設置された設備品に関する資料の整理、読解、分析を進め、図像的(物理的) 変化とその特徴について明らかにしていく。その上で戦前から戦後にかけての子ども健康問題に関わった人々(学校関係職員、学校三師、PTA、民生委員、地区保健課、保健所、警察等)の学校保健実践をこれまでの研究で体系化された戦後の子どもの健康問題(栄養失調や結核問題、う歯問題等)への取り組みの詳細とともに整理していく。また、学校のみならず、社会全体での子どもの健康問題への取り組みや対策とも重ね合わせながら、具体的に誰がどのように対応していたか明らかにし、それらの取り組みにおいて「保健室(衛生室)」がどのように関わっていたか明らかにし、保健室機能の変化の特徴を明確にしていく。
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Causes of Carryover |
令和2年度から引き続くコロナウイルス感染症の影響により、史料収集に遅れが生じ、それに伴い予定していた史料読解・整理等が進まず、研究活動に遅れが生じている。よって今年度、遅れが生じている資料整理費用や学会発表および論文投稿等の費用に次年度使用額を使用する予定である。
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