2023 Fiscal Year Annual Research Report
Reconsideration of W.Dilthey's Pedagogy
Project/Area Number |
20K02535
|
Research Institution | Osaka Kyoiku University |
Principal Investigator |
瀬戸口 昌也 大阪教育大学, 教育学部, 教授 (00263997)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | ディルタイ / 生の哲学 / 解釈学 / 精神科学的教育学 / 陶冶 / 教育科学 / 教育哲学 / 人文主義 |
Outline of Annual Research Achievements |
報告者は、ドイツの哲学者であるとともに、ドイツの「精神科学的教育学」の祖とも言われるW.ディルタイ(1833-1911年)の教育学の現代的意義の研究を行なった。その結果、以下のことが明らかになった。 1.ディルタイの教育学は19世紀末から20世紀初頭にかけてのドイツの中等教育(ギムナジウム)改革の時期に展開された。その教育学の特徴として、当時のドイツ(プロイセン)の国家主義的な教育思想、新人文主義の影響(人文主義的ギムナジウムの伝統的な教育内容と方法に対する批判)、教育現実(現場の教師)に基づく教育改革論、盟友ヨルク伯との教育改革をめぐる議論の影響(歴史意識の形成の必要性)、教育を科学的に基礎づけるための心理学の適用、などが明らかになった。 2.現代ドイツの教育科学の諸理論は、20世紀末から現在まで、多様な潮流と学派に分かれ、それぞれが独自の内容と方法論を形成している現状にある。このような現状の中でドイツの教育科学では、伝統的なBildung(陶冶・教養・人間形成)概念と、精神諸科学の方法論としての解釈学と、科学(学問)概念が分断された状況にあることが明らかになった。 3.ディルタイは、自身の教育学を「精神諸科学の哲学的基礎づけ」の1例という観点で展開しようと試みた。その構想は、ドイツ独自の陶冶概念に基づき、心理学と解釈学とを新たな観点から適用しつつ、「科学的教育学」を展開しようとしたものであった。この構想は結局未完に終わったが、ディルタイが晩年の課題とした「精神諸科学の知識の客観性の基礎づけ」の問題は、生の哲学の立場による「解釈学的な知識の理論」あるいは「解釈学的論理学」として、陶冶と解釈学と科学が分断された状況にある現在の教育科学理論に対して、その修復と改善のための重要な観点を提供するものである。
|