2020 Fiscal Year Research-status Report
近代日本における実業補習学校と地域社会に関する調査研究
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20K02552
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Research Institution | Ashiya University |
Principal Investigator |
三羽 光彦 芦屋大学, 臨床教育学部, 教授 (90183392)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 実業補習学校 / 地域教育 / 産業教育 / 社会教育 / 青年教育 / 民衆教育 / 6・3・3制 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、地域社会に即した実業補習学校の多様な発展過程が、地域に根ざした青年教育を創造する過程であり、民衆的な青年教育(大衆的中等教育)のあり方を自生的に創り出す過程であった、という仮説を検証することを目的としている。そして、それは、近代公教育の表の面とは異質な、民衆的・自生的な日本の教育のもう一つの側面を示すものであり、戦後6・3・3制に継続する改革であったという問題提起を含んでいる。そのためには、地域社会や他の学校制度と個々の実業補習学校の関連構造について、地域に密着した調査を全国にわたって実施する必要がある。そこで科研費補助を申請して研究を進めた。しかしながら、2020年度は年度は新型コロナウイルスの流行が連続しておこり、調査旅行に行くことがまったくできなかった。 そこで、急遽、文献調査とそれまで収集した資料をもとにして論文をまとめることを2020年度の課題とした。 ①文献調査:新潟県岩船郡、北海道虻田郡、北海道空知郡などの文献を調査した。これらの地では、実業補習学校が「高等国民学校」あるいは「公民学校」などと改称し、改革が実施されたが、その実態を調査した。 ②論文の作成:「戦後6・3・3制の先導的施行に関する一考察(2)――新潟県の「関谷学園」、全村的生産教育の実態――」(芦屋大学紀要『芦屋大学論叢』73号、2021年9月)および「北海道における実業補習学校制度の発展過程に関する一考察(1)――1922年の高等国民学校準則と空知高等国民学校――」(芦屋大学紀要『芦屋大学論叢』74号、2022年3月)を作成した。前者は、戦前の実業補習学校から戦後の6・3・3制への変革の過程、後者はデンマークの国民高等学校を範とした北海道独自の実業補習学校改革を明らかにしたものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
2020年度は年度当初から、新型コロナウイルスの流行が第1波(春)、第2波(夏)、第3波(冬)と連続しておこり、都市部から地方へ調査旅行に行くことがまったくできなかった。それが研究の遅れた大きな原因であった。そこで急遽、文献調査と、それまで収集した資料をもとにして論文をまとめることにした。その結果、阪神地域の図書館や古書店にて入手できる文献をもとにして、ある程度の研究ができた。また、これまで収集した資料をもとにして、論文を2本作成することができた。しかし、研究の進捗状況は全体的に「遅れている」という状態にある。
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Strategy for Future Research Activity |
従来通り、青森・宮城・福島・群馬・栃木・茨城・山梨・和歌山・富山・石川・福井などの地方について、地域に即した個性的な実業補習学校教育の事例を調査して、地域や青年たちの教育要求と結びついた実業補習教育の理念・実態がどうであったかを実地調査することとする。昨年度、新型コロナウイルスの流行によって遅れた地域調査の部分をとりかえす必要がある。しかし、2021年度も新型コロナウイルス流行のために、地方の資料館などが閉館になったり、調査相手からインタビューの辞退や延期の申し出があれば、調査研究自体を1年ほど延期する必要が出てくるかもしれない。しかしそうあった場合でも、今のところは、現状で手に入る限りの文献調査と、すでに今まで収集した資料をもとにした報告書ないしは論文の作成をめざしたい。
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Causes of Carryover |
2020年度は、残念ながら新型コロナウイルスの流行により、調査対象地域に旅行できなかったため、大幅な次年度使用額(1,094,108円)が生じた。翌年度分と合わせると2021年度にに使用することのできる額は、2,524,108円となる。このうち、①調査旅費には1000000円程度、②資料・文献購入費には1000000円程度、③物品購入費には500000円程度を予定している。新型コロナ流行状況によっては、調査旅費が少なくなり、次年度繰り越しが生じる場合も想定されるが、その場合は、文献・資料調査により力点を置いて進めたいと考えているので、文献購入費等が多くなる可能性がある。
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Research Products
(2 results)