2021 Fiscal Year Research-status Report
「肯定的な数学的アイデンティティ」の形成を目指した小学校教員養成プログラムの開発
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20K02553
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Research Institution | Mukogawa Women's University |
Principal Investigator |
神原 一之 武庫川女子大学, 教育学部, 教授 (80737718)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
矢野 裕俊 武庫川女子大学, 教育学部, 教授 (80182393)
神山 貴弥 同志社大学, 心理学部, 教授 (00263658)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 数学的アイデンティティ / 小学校教員養成 / 実践的指導力 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,日本,アメリカ合衆国,フィンランドの3ヵ国の小学校教員養成カリキュラム(算数・数学科関連科目)における「肯定的な数学的アイデンティティ」の形成に関する資料の包括的な資料の収集・調査を行い,小学校数学教員養成における「肯定的な数学的アイデンティティ」の形成に資するプログラムを提案することを目的としている。令和3年度は,国内の研究協力者とZoomによる会議を重ねながら,「数学的アイデンティテイ」に関する横断的調査とコロナ禍のため国内の大学における算数関連科目の情報収集を主に行った。その結果,次のような成果を得た。 (1)算数科教育法を学修する前の大学2年生を対象とした調査からの示唆:「限られた時間の中で,より健全な『算数・数学指導者としての数学的アイデンティティ』を形成していくためには,「陶冶性・文化性・実用性に関する認識」や「陶冶性に関する意欲・習慣」を高めていくことに重心を置いた指導をすべきこと,真理を追究する態度や倫理的思考力,問題解決力,批判的思考力,統計的リテラシーを身につけるためには,数学的探究活動を積み重ねていくこと (2)算数科教育法を履修前後のA私立大学3年生を対象にした調査からの示唆:「指導者としてのMID(スキル)」は,履修前よりも履修後に高まること,「学習者としてのMID(認識)」は,履修前よりも履修後に低下する項目が多くあること (3)(1)(2)の調査結果と大学1年生と4年生を対象にした調査結果からの示唆:算数科教育法と算数科内容論の学修を通して, 「学習者としてのMID」と「指導者としてのMID(認識・スキル)」の形成を図ることを開発の視点に取り入れること、数学的探究活動を実際に学生たちに体験させることが重要であること ※MIDは本研究における数学的アイデンティティの略
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
令和3年度は,国立大学2校(1年生,2年生),私立大学3校(1年生,2年生,3年生)を対象にしたアンケート調査を実施すると共に算数関連科目に係るカリキュラム調査,アンケートの横断的研究を米国,フィンランドに拡張する予定であった。国内調査はほぼ予定通り進み,全国数学教育学会,日本数学教育学会,武庫川女子大学教育学論集などにその成果を発表することができた。 フィンランドとアメリカにおける調査については依頼を行ったがコロナ禍の影響があり,調査ができなかった。また,令和2年度に引き続き,国内外の研究者による授業研究会についてはコロナ禍の影響で実施することができずZoomによる研究協議のみとなった。なお,予定はしていなかったが,A私立大学の4年生を対象に同様のアンケートと合わせて「算数・数学に対する消極的な思い」に関するアンケートの予備調査を行うことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
令和4年度は,数学的アイデンティティに関する縦断的調査をA私立大学で継続して行うとともに,算数関連科目のプログラム開発にむけて授業研究会を実施する。来日が可能であれば,フィンランドとアメリカ合衆国からの研究者を招き協同で実施する。フィンランドの研究者には今年度の来日を要請中である。コロナ禍の状況により両国が難しい場合には,来日可能で本研究の目的を損なわない範囲で他国(現在,イギリスの研究者と調整中)にも拡大して共同研究を開始する。 具体的には次のように推進していく。 (1)大学3年生を対象に算数科教育法履修前後において数学的アイデンティティの調査を継続して行う。(4月,7月) (2)大学1年生を対象に開発した算数科内容論の授業実践を行うとともに,授業研究会を開催する。フィンランド・アメリカの研究協力者と授業研究を対面またはZoomにて行う。(6月または7月) (3)(1)(2)に関わり,研究協力者会議をZoomまたは対面で実施し,調査結果の分析とカリキュラム開発に関する協議を行う。(5月,7月,9月,11月,1月) (4)カリキュラム開発に関わりイギリスの研究者と協議を対面またはZoomにて行う。(8月,3月)
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Causes of Carryover |
令和2年度,令和3年度実施予定であった対面による研究会議と授業研究がコロナ禍のため開催することができなかった。そのため,それに係る旅費及び謝金として予定していた1,806,854円を使用することができなかったため次年度使用額が生じた。コロナウィルス感染拡大に係る国際情勢に左右されるところもあるが,令和4年度は実施できなかった授業研究に係る国内外旅費,アンケート実施・データ整理に係る人件費・謝金等を主として使用していく予定である。
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